
ドイツを訪問中の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が29日(現地時間)、「北朝鮮は米本土を攻撃できる3大国の一つになった」とし、「冷静に認めるべきは認めねばならない」と発言した。韓国と北朝鮮が「すでに現実的に2国家」と述べてからわずか5日後に、北朝鮮の核保有を事実上容認するような発言をし、波紋が広がっている。李在明(イ・ジェミョン)大統領も8月の訪米時に北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術が「最終段階にある」と言及しており、相次ぐ北朝鮮核能力容認メッセージの背景に関心が集まる。米朝間の対話が迫っているためだという観測とともに、韓国政府内の対北・対米政策を巡る路線対立が突発的発言につながっているのではないかという懸念も出ている。
● 鄭東泳氏「ハノイでスモールディールしていたら」
鄭氏は同日、ドイツ・ベルリンでの記者懇談会で「北朝鮮の戦略的位置が変わった」と述べ、米本土を狙える3大国の一つと表現した。対象は北朝鮮、中国、ロシアとみられる。さらに2019年のハノイでの米朝首脳会談について「スモールディールが成立していれば核問題の展開は大きく変わっていただろう」とし、会談決裂直後の深夜の記者会見で崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が「米国は千載一遇の機会を逃した」と述べたことを想起し、「残念ながら正しかった」と付け加えた。
鄭氏は就任以来、北朝鮮の対外姿勢を擁護し核能力を肯定的に評価する発言を繰り返してきた。就任直後の7月の記者懇談会では韓米合同軍事演習の延期を提案、今月に入ってからも演説や懇談会で南北を「平和的かつ現実的な2国家」と見なそうと訴えた。
李氏も北朝鮮の核能力に寛容な姿勢を示している。先月の国連総会演説では「ENDイニシアチブ」を打ち出し、非核化(Denuclearization)よりも交流(Exchange)や関係正常化(Normalization)を前面に据えたロードマップを公表。ニューヨーク証券取引所で投資家と会った際には制裁解除を提案し、「北朝鮮は体制維持に必要な核をすでに十分に保有しているようだ」と述べた。8月25日に行われたワシントンDCの戦略国際問題研究所(CSIS)での演説では「ICBMの再突入技術は最終段階を残すだけで、北朝鮮は年間10~20発の核爆弾を製造できる能力を持つ」と発言した。
韓国政府が北朝鮮の核保有を公式に認めたのかとの疑問が出る中、首脳自ら北朝鮮の核高度化に言及するのは、米朝対話を意識したものとの観測が流れている。トランプ米大統領が31日に慶尚北道慶州(キョンサンプクト・キョンジュ)でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する際、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と板門店(パンムンジョム)などで会う可能性が取り沙汰される中、韓国政府が仲介役を自任しているとの解釈だ。梨花女子大学北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「鄭長官も李大統領も、トランプ大統領に早く交渉せよ、米朝対話を通じて南北関係を進展させようという明確な目的で同じメッセージを出している」と指摘。「北朝鮮は事実上の核保有国で米本土攻撃力を持つので核軍縮交渉をしようと代弁している格好だ」と述べた。
元外交高官は「北朝鮮非核化路線を放棄したのか、米国と核保有認定のリスクを負ってまで対話を推進する大義名分があるという合意が成り立っているのか見極めるべきだ」と述べた。
● 対北路線対立の深刻化への懸念も
問題は政府発足後、北朝鮮核問題の観点を巡り路線対立が深刻化している点だ。特に韓米同盟を重視する「同盟派」とされる魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長の最近の動きを見ると、対北朝鮮緊張緩和と南北関係を重視する「自主派」的発言を収拾するのに忙しいとの見方が多い。魏氏は先月30日、国内通信社との懇談会で李氏の北朝鮮核兵器確保発言について「北朝鮮の核を認めるという趣旨というよりは警戒心を持つべきだという点を強調した発言だ」と解釈した。
鄭氏の現実的2国家発言についても「南北基本合意書にも南北は特殊関係と規定されており、歴代政府も踏襲してきた」とし「『特殊関係』という概念を手放すと北朝鮮問題においてわれわれの発言の余地が狭まる」と政策の継続性を強調した。ただし、魏氏は「私が『なんとか派』とされているが、何が最適の国益かだけを考えている」とし、この種の派閥区分に一線を画した。
申나리 journari@donga.com






