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「劣性遺伝子」という考えは誤り 分子生物学者が語る人間の無知と偏見

「劣性遺伝子」という考えは誤り 分子生物学者が語る人間の無知と偏見

Posted September. 20, 2025 08:41,   

Updated September. 20, 2025 08:41


どの科学にも両面性はあるが、歪んだ遺伝学ほど世界史に悪影響を及ぼしたものはないだろう。ナチス・ドイツが第二次世界大戦やホロコーストを引き起こす思想的根拠となったのも、まさに優生学である。分子生物学者である徳成(トクソン)女子大学教授が、遺伝子に関する無知と偏見の歴史を照らし出した著書だ。

古くからあらゆる差別や対立の原因となり、今でも「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」運動の必要性が示すほど影響力のある人種はどのような存在か。人類という同じ種内の下位集団、すなわち亜種のようなものか。著者によると「まったく違う」。

約4万年前、アフリカで誕生した現生人類はもともと肌の色が濃かった。濃い肌色は強い日光から身を守る働きがあった。しかし、彼らが新たに進出した高緯度地域では、日光を効率よく吸収できる明るい肌の方が生存に有利だった。そのため、メラニン色素の生成を抑える遺伝子変異を持つ者が生存力の強い子孫を残した。現在、多くのヨーロッパ人や相当数のアジア人にこの変異が見られる。

肌の色が意味するのはそれだけである。人々は肌色や瞳、唇など目立つ特徴で人種を区別しようとするが、生物学的な根拠はほとんどない。むしろ、人類は事実上「クローン」に近い。全ての人間のゲノム配列は、塩基配列レベルで99.9%同一である。これほど同じような種は、哺乳類ではほとんど見られない。人種は文化の産物であるというのが著者の結論だ。

本書ではまた、犯罪や暴力を誘発するとされる「悪い遺伝子」の実態、人間を社会的動物に変えた遺伝的変化なども考察されている。がんを引き起こす遺伝子とそれを抑制する遺伝子の力比べも取り上げた。そして著者は、「私たちの遺伝子が優劣の原因ではなく多様性の源泉である」という結論に至っている。


趙鍾燁 jjj@donga.com