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ブラック企業化する学校、教職からの脱出を夢見る若手教師たち

ブラック企業化する学校、教職からの脱出を夢見る若手教師たち

Posted September. 09, 2025 09:05,   

Updated September. 09, 2025 09:05


京畿道(キョンギド)で教師を勤めていた20代のA氏は最近、辞職届を出して公認会計士の試験勉強を始めた。幼い頃から教師を夢見ていたが、学校は使命感だけで持ちこたえるにはあまりにも厳しい職場だった。大小さまざまな保護者の苦情にさらされ、信念を持って子供たちを教えても、いざ問題が起きた際に学校が自分を守ってくれるのか、常に疑問を抱いていたという。

首都圏の小学校教員を辞め、今年下半期の企業の公開採用に応募しているB氏も進路を変えた。教師に任用された翌年、ソウル瑞二(ソイ)小学校で教師が死亡する事件が発生し、同僚教師たちの士気が大きく下がったという。当初は収入より名誉を重視して選択した職業だったが、企業に入社した高校時代の友人たちとの賃金格差を実感し、一歳でも若いうちに新しい道を探さなければならないと判断した。

教育部がまとめた資料によると、中途退職する教員数は、2020年の6704人から昨年は7988人に増加した。A氏やB氏のように勤続5年未満で退職する教員は、同期間に290人から380人へと31%増えた。退職者に占める若手教員の割合は年々高まっている。

安定した職場の象徴だった大韓民国の学校が、なぜ若い教員にとって低賃金と不合理な労働を意味する「ブラック企業」となってしまったのか。教員たちが生涯の職場を捨てる理由は、悪質な保護者からの苦情と過度な事務作業、それに比べて低いん給与など、複合的な要因によるものだ。

学級写真を撮る時、子どもが嫌がる友だちの隣に立たせたと抗議を受けたり、携帯電話を使用を禁止しただけで保護者からクレームを受けるのは日常茶飯事だ。昼休みに子供の服に食べ物がつくと「服を洗って返してほしい」と求められ、怒りに満ちた苦情メッセージを一晩で数十、数百通受けることもある。

2023年に瑞二小学校教員の死亡事件が起き、いわゆる「教権4法」が可決されたが、現場の教員たちは、大きく変わったことがないと感じている。苦情対応チームを新設する方針が示されたものの、初期対応は全て現場の教員に集中し、教師だけが負担を背負わされるため、また、問題解決への期待がないため、教師たちは教権保護委員会への持ち込みも敬遠されがちだという。

教師労働組合連盟が今年4月に全国の教師4068人を対象に行った調査では、46.8%が「過去1年以内に悪質な苦情で教育活動を妨げられた経験がある」と回答した。勤続25年のC氏は、「質の高い公教育は、教師と生徒、保護者が『ワンチーム』になって作りあげるものだ」とし、「教師が敬遠される職業になれば、その被害は最終的に生徒に及ぶ」と訴えた。

先月末、ソウル教育大学では注目を集めるイベントが開かれた。米バージニア州フェアファックス教育庁が韓国教員の採用説明会会を実施したのだ。ワシントン近郊でも有数の学区である同地域は、教員不足の解決と多様性確保のため「アンバサダーティーチャープログラム」を運営し、優秀な教師を国外から積極的に採用している。昨年は試験的に韓国の小学校教員10人を選抜したところ、現地で専門性や教育力の高さが高く評価されたという。学校が若くて有能な教員にとってブラック企業のような職場であり続ける限り、学界と産業界で進んでいる海外への人材流出が教育界で起こらないとも限らない。