
「孫興慜(ソン・フンミン、33)が来るという話で韓国系コミュニティ全体が沸き立っているようだ」
米カリフォルニア州ロサンゼルス南東部のオレンジ郡に住むキム・ドギョンさん(29)はこう語った。キムさんは「職場の同僚もみんな孫興慜の話題で盛り上がっている。喜ぶ姿が目に見えるほどだ」と付け加えた。さらに「もともと孫興慜の試合がある日は、韓国料理店に集まって彼の活躍を見守っていた。異国で奮闘する彼の姿は、在米韓国人にとって大きな慰めであり、人生の原動力になっていた」と言い、「もし近くで孫興慜の試合があるなら、必ず直接観戦したい」と話した。
孫興慜のロサンゼルスFC(LAFC)加入は、すでに既成事実化している。米プロサッカー・メジャーリーグサッカー(MLS)のLAFCは6日、「韓国時刻で7日午前7時、ホームスタジアムのBMOスタジアムで重要な発表を行う予定だ」と発表した。孫興慜のLAFC加入が「公然の秘密」となっていたことから、この場が入団式となる可能性が高い。
孫興慜は3日、ソウルワールドカップ競技場で行われたニューカッスルとのイングランド・プレミアリーグ・プレシーズンの親善試合(1-1のドロー)を最後に、10年間プレーしたトッテナム・ホットスパーと別れを告げた。
5日に出国した孫興慜は、6日にロサンゼルス国際空港に到着した。空港にはさまざまな横断幕や応援のプラカードを掲げたファンが詰めかけ、大きく混雑した。孫はすぐにBMOスタジアムへ向かい、LAFCとティグレス(メキシコ)とのリーグカップ試合を観客席で観戦した。試合中、拍手を送る孫の姿が電光掲示板にも映し出された。
プレミアリーグ得点王の実績を持つ孫を獲得したLAFCは、MLS制覇を狙える戦力を備えたとの評価を受けている。MLSは、東西15チームずつ全30チームが所属し、各チームがレギュラーシーズン34試合を戦う。そして、それぞれのカンファレンスから9チームがプレーオフに進出し、王者を争う。LAFCは現時点で勝ち点22(10勝6分6敗)で西カンファレンス6位につけている。
しかし成績以上に、LAFCが孫を獲得した最大のメリットは、5000万人の韓国人ファンを獲得できるということにある。前所属クラブのトッテナムも、孫の人気を背景に、ユニフォームの販売はもちろん、プレシーズンツアーやスポンサー誘致などの恩恵を享受した。錦湖(クムホ)タイヤなど韓国企業とのパートナーシップを結ぶなど、アジア市場の拡大にもつながった。
ロサンゼルスという本拠地も、相乗効果を高められる要因だ。ロサンゼルスはすでに韓国人ファンにとって馴染み深い都市であり、「コリアン特急」朴賛浩(パク・チャンホ、52、引退)や「ブルーモンスター」柳賢振(リュ・ヒョンジン、38、現ハンファ)らが活躍した米プロ野球メジャーリーグ(MLB)の人気球団であるロサンゼルス・ドジャースの本拠地でもある。今も内野手の金慧成(キム・ヘソン、26)がドジャース所属で活躍している。
また、ロサンゼルスは米国で最も韓国系人口(約32万人)が多い地域でもある。やはり米国内最大規模のLAコリアタウンは、在米韓国人社会の中心的存在となっている。
米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」は、「LAFCはトッテナムに対し、MLS史上最高額となる約2000万ポンド(約368億ウォン)の移籍金を支払う予定だ」と報じた。これまでの記録は、アトランタがエマニュエル・ラテ・ラース(26・コートジボワール)を獲得する際に、イングランドのミドルズブラに支払った2200万ドル(約305億ウォン)だった。
30代の選手1人を獲得するための金額としては過大な投資とも言えるが、LAFCがこの契約を通じて、より大きな商業的利益を得るだろう、との見方もある。ドジャースが日本人「スーパースター」大谷翔平(31)の獲得で成功を収めているように、孫がもたらすマーケティング効果が移籍金を補って余りあると見られている。
ハン・ジョンホ記者 hjh@donga.com






