
「大統領執務室と秘書室があまりにも遠いため、大統領に報告する際に車で移動しなければならなかった。このように時間がかかるため、大統領と直接対面せずに電話で報告することも多かった」
朴槿恵(パク・クンヘ)政権で政務首席秘書官と広報首席秘書官を務めた李貞鉉(イ・ジョンヒョン)元セヌリ党(「国民の力」の前身)代表は、大統領府の空間構造について、「業務の能率や効率、内部の意思疎通に問題がある」とし、このように語った。大統領執務室がある本館と秘書棟である与民1~3館の距離が約600メートルあり、大統領と参謀陣の円滑な意思疎通が困難だったという。
これに対し、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領は与民1館に臨時執務室を設けて時折勤務し、文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は就任直後に与民1館に正式な執務室を設けて勤務した。しかし、これも大統領と主要参謀陣が同じ空間で勤務できず、秘書棟3ヵ所に分散するという限界があった。
歴代政権は大統領府の空間再整備の必要性を痛感していたが、代替空間や国会での予算確保が難航し実行できなかった。李在明(イ・ジェミョン)政権はひとまず龍山(ヨンサン)で執務を開始する。国会で過半数の議席を持つため予算交渉にも有利だ。また、大統領府の空間とともに来月完成予定の政府ソウル庁舎の昌成洞(チャンソンドン)別館も活用できる状況だ。李明博政権で大統領室長を務めた任太熙(イム・テヒ)京畿道(キョンギド)教育監は、「当時、李明博大統領に大統領府の再建を提案したが、国政運営に役立つことはなさそうだとして推進できなかった」と述べ、「李在明大統領が次の大統領まで考慮し、予算を適切に確保して建設すればいいだろう」と話した。
●文政権、秘書棟に移ったが水平構造は整えられず
文氏は大統領府本館にある執務室をまったく使用せず、与民1館3階に執務室を設けた初の大統領だった。与民1館は、盧氏が本館と秘書棟の距離が遠すぎるとして簡易執務室を設けるために新築した建物だ。
文氏は与民1館2階に大統領秘書室長室、1階に政務首席室を配置した。また、与民2館には政策室長傘下の首席室、与民3館には国家安保室などを配置した。
これにより、大統領と参謀陣の距離は縮まったが、水平型のリアルタイムの意思疎通構造は確立できなかった。大統領と秘書室長が同じ階にいなかったうえ、その他の参謀陣は別の建物に分散していたためだ。米国のウェストウィングが大統領執務室を基準に副大統領室、首席補佐官室、報道官室などが並んでいるのとは対照的な状況だ。
また、建設から50年以上が経過した与民2館(別館)、与民3館(東別館)については、十数年前からリモデリングまたは再建の必要性が提起されてきた。与民2館は1969年、与民3館は72年に竣工し、建物は老朽化が進み、すでに安全診断でD等級を受けている状態だ。文政権で国民疎通首席秘書官を務めた朴洙賢(パク・スヒョン)議員は、「与民2、3館は効率を考慮せずに建てられたため、業務を行うのに非常に不便だ」と語った。李明博政権で外交安保首席秘書官を務めた千英宇(チョン・ヨンウ)韓半島未来フォーラム理事長も、「与民2、3館は外賓に見せるには恥ずかしいほどだ」とし、「韓国の公共建築物の中で最も老朽化しているだろう」と話した。
●執務室と秘書棟の統合新築の必要性を議論
このため、政界では与民2、3館を統合再建し、大統領執務室と秘書棟を合体させた建物を建設する案が議論されている。さらに、近隣にある与民1館と警護室の建物まで統合して一度に再建する案も検討されている。本館にはこれ以上大統領執務室を設けず、首脳会談や儀典など外賓を迎える空間としてのみ活用するということだ。
任氏は、「秘書棟と警護室を撤去し、大統領執務室と秘書棟を統合した建物を建設すべきだ」と提案した。千氏は、「北朝鮮の核の脅威に備えなければならないため、新築建物にバンカー機能を加え、有事の際にも正常に勤務できるようにすべきだ」との考えを示した。
このほか、与民2、3館をリモデリングした後、与民1館まで3棟を空中回廊で連結するアイデアも浮上している。または、大統領府本館をリモデリングして核心参謀陣の空間を設け、本館横の空き地に秘書棟を新築する案も議論されている。
慶熙(キョンヒ)大学未来文明院のアン・ビョンジン教授は、「秘書室長など核心参謀陣は、大統領がドアを開けて声をかければすぐに駆けつけられる距離にいるべきだ」とし、「執務室のソファで参謀陣が共に座り、気兼ねなく討論できる環境が望ましい」と語った。
一部では、大統領と参謀陣の意思疎通は建物など空間構造とは関係なく、大統領の意志にかかっているとの指摘もある。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の場合、10階建ての建物である龍山(ヨンサン)大統領室に全職員が入居し、2階に主執務室と秘書室長室を配置していた。
また、大統領府が権力を象徴し、孤立したイメージがあったため、これを打破する方策も模索すべきだとの指摘もある。李貞鉉氏は、「大統領府に再び入ることが既存の悪い認識を呼び起こさないようにする方策も考えなければならない」と忠告した。
チョ・グォンヒョン記者 buzz@donga.com






