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朴正熙大統領も褒めた参謀の条件

Posted June. 10, 2025 08:04,   

Updated June. 10, 2025 08:04


李在明(イ・ジェミョン)大統領は4日、就任後初の人事に踏み切り、「国民に忠実なのが第一であり、次は有能(能力)だ」と人選基準を明らかにした。「国民に」という前提をつけたとしても、大統領が有能(能力)より忠実を第一に挙げたことは目につく。国民の基本権を制限する非常戒厳を宣言した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免の影響があるだろうが、京畿道(キョンギド)知事として働いた李氏を経験した人物の話も、大して変わらなかった。

京畿道出身の人物は、「李在明から気に入られるためには3つが必要だ、という話がある」と話した。第一は忠誠心だ。裏切らずに任務を全うする忠直な人だ。二番目は年だ。李大統領は、「仕事をする時は、元老や先輩を礼遇する性向ではないため、概して自分より若い人を重用する」と述べた。第三に、自分の勢力化をしない人物だ。李大統領が初の人事で、同い年の金民錫(キム・ミンソク)首席最高委員を首相候補に、11歳若い70年代生まれの姜勳植(カン・フンシク)議員を秘書室長に選んだのは偶然ではないだろう。

李大統領が能力より忠直を優先視したのは、自分自身が城南(ソンナム)市長と京畿道知事を経験した実務と現場に詳しい政治家だからだという見方もある。たとえ大統領の考えがそうでなくても、外でこのように考えれば、そのような人が絡まり、忠誠競争をする人物で周辺が満たされる恐れがある。同質集団で起きる「集団思考」の誤りは、よくある意思決定の失敗の原因だ。似たような考えをする人がそばに多くなるほど、警戒しなければならない。

李大統領は就任演説で、「朴正熙(パク・ジョンヒ)の政策も、金大中(キム・デジュン)の政策も必要ならば使う」と述べた。2番目の人選基準である有能さの条件は、過去から学ぶことができる。朴正熙元大統領が称賛した有能な参謀の条件は、限られた資源で矛盾した状況を克服する問題解決能力だった。2019年に亡くなった吳源哲(オ・ウォンチョル)元大統領経済第2首席秘書官は、生前のインタビューで、「参謀たちは、大統領が要求する答を常に持っていなければならない」とし、「頭が良いという大統領の一言の誉め言葉を聞こうと、常に考えあぐねていた」と振り返った。

ソウル大学工学部を出た呉氏は、「豚コレラが発生して、豚肉の輸出ができなくなると、肉でドイツのようにハムとソーセージを作り、革で軍靴を生産しようというアイデアを出し、朴元大統領から褒められた」と話した。大統領が高速道路を通る途中、トンネル内部についた真っ黒な煤煙を無くす方法を尋ねると、拭き取りやすいようにタイルを壁に貼ろうという対策を出した。トンネルのタイル壁はその時にできた。重化学工業の育成過程で、造船所の人手不足の問題が浮き彫りになると、働き口が足りない女性人材を投入して解決した。

2025年の国政は、はるかに複雑だ。米国との関税交渉に決着をつけるため、対米貿易黒字を減らさなければならないとしても、韓国の輸出企業と雇用は守らなければならない。「ゼロ成長」の危機から抜け出そうと財政を緩和しても、未来世代のために国家負債を疎かにしてはならない。首都圏の競争力を維持しながら地方経済を育てなければならず、青年の負担を減らしながら老年所得を保障する年金改革もしなければならない。建設景気を活性化させ、不動産過熱は避け、自営業者の借金負担を減らすものの、モラルハザードと逆差別は防がなければならない。総合株価指数(コスピ)5000時代のために株主の価値を保護しても、企業価値の毀損はあってはならない。いずれも反目と対立が予想される難題だ。

いくら有能な大統領でも、一人で国を率いることはできない。のり巻き1本を前において、寸刻を争う会議をやっても、365日解決策を考える参謀たちの情熱と問題解決の力量がなければ、まったく無駄だ。特に経済と金融、産業技術が覇権競争の武器となる地経学の時代を生きていくためには、金大中元大統領が強調した「書生の問題意識と商人の現実感覚」に、朴元大統領が褒めた「職人の問題解決力」まで必要だ。このような条件を備えた参謀や閣僚、公共機関の責任者を捜し出すことが、心から国民に忠実な人選だ。