6・3大統領選挙の期日前投票が、本投票5日前の28日から2日間行われる。住所地内の指定された投票所で行わなければならない本投票とは異なり、期日前投票期間中には別途の申告手続きなしに全国3568ヵ所のすべての期日前投票所で投票できる。期日前投票は導入以来、その割合が引き続き大きくなり、3年前の大統領選挙では総投票率の半分に近い高い投票率を見せた。各党と候補者が支持層の投票参加を最大化するために、期日前投票を積極的に呼びかけている理由だろう。
今回の期日前投票は、不正選挙陰謀論のターゲットになり、「期日前投票操作説」が飛び交う中で実施される。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は、12・3非常戒厳宣言の理由の一つとして不正選挙疑惑を挙げ、「主権侵奪勢力との合作」と主張した。罷免後の初公開の外部活動も、そのような陰謀論を主張するドキュメンタリーの観覧だった。にもかかわらず、一時、期日前投票の廃止を掲げた与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補でさえ、陰謀論に一線を画し、期日前投票の励ましに乗り出したことを見ると、幸いと言わざるを得ない。
尹氏の戒厳令妄動から6ヵ月ぶりに実施される今回の大統領選挙は、毀損された民主主義の価値と制度を一つずつ回復していく過程の一つだ。期日前投票など選挙手続きの正常稼動も、妄想に陥った指導者が崩した民主主義の手続き的正当性を再び立て直す過程だ。したがって、今回の大統領選挙を通じて新しい大統領を選ぶことに劣らず、不信と疑惑の対象となった制度の安定的な運営は、それ自体でこの半年間の混乱と価値の転倒を立て直す重要な要素になるだろう。
今回の選挙で、韓国の民主主義が完全に正常化するわけではない。憲法裁判所の大統領罷免決定から2ヵ月後に、その後任者を探して回復の道に入るだけだ。早期大統領選挙でなかったら、すでに1年前から各党から予備候補が出て党内選挙を行うなど、自然と資質や能力が検証される機会を経験していただろう。しかし、突然実施される大統領選挙であるため、十分に準備できなかった候補と同様に、国民も十分に候補を評価できないまま、選択の時間を迎えた。
だからといって、新大統領の人物像は些細な問題であるはずがない。葛藤と分裂を癒し、国民的エネルギーを一つに結集するコミュニケーションと統合の指導者でなければならない。国内的な経済難と生活苦、対外的不確実性の高波を切り抜けていける能力のある人物でなければならない。米国をはじめ世界各国が民主主義を傷つけ、まるで退行競争でも繰り広げているかのような昨今である。折れそうになった民主主義を国民が守り抜いたように、崩れた国格を正す大統領を選び、その回復力を世界に示す番だ。
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