ゴルフで相手がボールをカップに寄せたとき、次のショットを打たずに相手の勝利を認めるゴルフ用語の「コンシード(concede)」、つまり「オッケー」が最近話題になっている。カタール王室から4億ドル(約5600億ウォン)の超豪華航空機のプレゼントを受けようとするトランプ米大統領が、「(相手が)コンシードをくれるというのに受け取らなければバカだ」と言ったからだ。
トランプ大統領は「ゴルフマニア」らしくゴルフ用語を使った。しかし、コンシードに込められたスポーツマンシップ精神までは理解できなかったようだ。代価が伴わざるを得ない天文学的な贈り物に対する様々な批判をなだめるためにこの表現を使ったところを見ると、なおさらだ。
フィールドでコンシードを与えるかどうかについては、ちゃんとした基準がない。相手を尊重し、試合を円滑に運ぶあめの慣行でありマナーだからだ。コンシードの価値は熾烈な勝負の時に特に輝く。
米国選抜と欧州選抜によるゴルフ対抗戦「ライダーカップ」の1969年の対決は「ザ・コンセッション(The Concession)」という名前で今も話題になっている。1927年に始まったライダーカップの100年余りの歴史で最も熾烈な勝負だった同大会で、米国選抜の最後の走者だった★ジャック・ニクラスは勝利を目前にした瞬間、英国選手にコンシードを与えて試合を引き分けで終えた。「運良く勝ちたくない」というのが理由だった。
ニクラスが所属する米国選抜からは「手に入るところだった勝利を手放した」という批判を受けたが、「スポーツマンシップの代表的な事例」としてゴルフの歴史に記録された。逆に勝敗に執着した多くのゴルフ選手は、しばしばクラブを投げ出して、同僚を尊重しない姿でファンを不愉快にさせる。
「政界」も品格と信頼が切実に求められるという点でフィールドに似ている。しかし、トランプ大統領は相手を「ライバル」ではなく、「敵対者」と認識する。彼の辞書に「譲歩」や「認定」はない。いまだに自身が2020年の米国大統領選挙で負けたことを認めていない。政権を握った後も、自分に批判的な人物に対する報復を試みている。トランプ氏が本当に「コンシード」精神を発揮しなければならなかった場所は、天然ガス富国であるカタールとの会談場ではなくホワイトハウスと議会だったが、彼はこの場所を戦場に変質させてしまった。
5日後に迫った韓国の大統領選挙でも似たような現象がみられる。陣営間の対決が極端な感情争いに変質し、大統領選後の混乱を憂慮せざるを得ない。候補者が相手の長所を認め、時には「パット譲歩」を認めるスポーツマンシップは見当たらない。各候補者の支持層も、相手陣営を認めて尊重する代わりに、最初から「ノックアウト」させようとしている。熱烈なファンダムは自身が支持する政治家に「妥協」ではなく「圧倒的勝利」だけを要求する。
突然の戒厳以降、社会は大きく分断し、街の商店街はがらんとしている。世代間の葛藤は年金など敏感な問題をめぐって日増しに深まる。今、韓国が直面している問題は、誰も一人では解決できるものではない。しかし、韓国政界がこのような問題をめぐって政策的妥協を図ることができるのか、有権者の立場では容易に想像しがたい。
韓国であれ米国であれ、政治で「コンシード」が必要な時点は尊重とスポーツマンシップが失われた今ではないだろうか。コンシードはゴルフから始まったが、今は政治にもっと切実に求められている。
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