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成績表に描かれた孤独

Posted March. 06, 2025 08:51,   

Updated March. 06, 2025 08:51


都会人の孤独と寂しさをエドワード・ホッパーほどうまく表現した画家がいるだろうか。人気のない通り、室内に孤立した人、一人で映画を見たり食事をしたりする人など、ホッパーの絵に登場する場所や人物はいつも孤独で寂しそうだ。では、ホッパーはいつからこのような絵を描いたのだろうか。

意外なことに、子どもの頃からだったようだ。ホッパーが1891年頃に描いた「海を見つめる少年」(写真)がその証拠だ。小さな白黒のドローイングには、海辺に立つ少年の後ろ姿が描かれている。両手を後ろに組んだ少年は、小首をかしげて海を見つめている。足元に波が打ち寄せているにもかかわらず、あまり気にせず、恐れる様子もない。体格を見ると4、5歳の子どもに見えるが、姿勢は真剣で、やんちゃな様子は全くない。まるでホッパーの晩年の作品に登場する孤独な大人たちに似ている。絵の右下にはサインもある。画家としての自意識を持って描いたということだが、当時ホッパーはまだ9歳だった。しかも、絵が描かれた紙は成績表の裏面だ。つまり、小学校4年生の子どもが自分の成績表の裏に落書きのように描いた絵なのだ。幼いホッパーが良くない成績に落胆して描いたのか、それとも単に手元にあった紙が成績表だったのかはわからない。

実際、ホッパーは小学生の時は勉強も得意だったと言われている。しかし、絵の才能があり、両親のサポートと励ましのもと、画家になった。1882年、米ニューヨーク市北部のナイアックで生まれたホッパーは、27歳までハドソン川を見下ろす家に住み、海辺や船を多く描いた。

この絵は、幼少期に近所に住んでいた牧師サンボーンがホッパーの死後、彼の家族の家の屋根裏部屋で発見した作品の一つだ。「晩年の作品の芽は常に初期の作品から発見される」。生前のホッパーの言葉通り、小学生だった頃のこの絵は、後に孤独を描く画家となる彼の運命を予感させる。