
トランプ前米大統領が「脳死ゾンビ」と呼ぶなど、連日非難を浴びせていたバイデン大統領を突然「素晴らしい討論者」と称賛した。27日に開かれる今回の大統領選挙の初のテレビ討論会で、バイデン氏が善戦するという見通しが大きくなると、バイデン氏に対する有権者の期待心理を刺激する方向に戦略を変えたとみられる。
トランプ氏は最近公開されたポッドキャストで、バイデン氏について「過小評価したくない」とし、「素晴らしい討論者になるだろう」と述べた。また、2012年の大統領選挙当時、民主党の副大統領候補だったバイデン氏が共和党の副大統領候補だったポール・ライアン元下院議長と討論したことを取り上げ、「ライアンを粉砕した」とも述べた。
バイデン氏に対する寛大な評価は非常に異例だ。トランプ氏はこれまで遊説のたびに「バイデンが2つの文章をつなげられない」と高齢問題を浮き彫りにした。14日には、主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)でバイデン氏が一人で席を外したように編集された映像を取り上げ、「脳死状態のゾンビのように歩き回っている」と揶揄した。
米CNNは、「トランプ陣営の驚くべき態勢転換」とし、「バイデン氏がテレビ討論で予想外の反響を得る可能性を遮断したいのだろう」と分析した。
だからといって誹謗中傷を全く止めたわけではない。トランプ氏は同日、支持者に送ったメールでは、「バイデン氏は薬物検査を受けなければならない」とし、「ホワイトハウスの助力者たちが、何をするか分からないバイデン氏が舞台で正気を取り戻すよう薬物で覚醒させるだろう」と主張した。
長年の仲の悪いCNNが討論会の主催者であることを挙げ、トランプ氏が逆境の中で戦っているというイメージづくりも忘れなかった。トランプ陣営の広報担当者は、「今回の討論は、虎穴に入るのと同じだ」と話した。トランプ氏も最近の遊説で、「バイデン1人ではなく、(CNNのアンカーであるジェイク・タッパーとダナまで)3人を相手にすることになるだろう」と話した。
バイデン氏は、大統領の別荘であるキャンプ・デービッドで、顧問弁護士のボブ・バウアー氏など前・現職参謀16人と討論の準備に励んでいる。米紙ワシントン・ポストは、「照明まで設置し、実際と同じ舞台を作り、実戦練習中」と伝えた。バウアー氏は最近、米政治専門メディア「ポリティコ」に、「トランプ氏がどのように討論に臨むのか、最大限接近するのが私の役割」と明らかにした。
ワシントン=ムン・ビョンギ特派員 weappon@donga.com