8日午後2時30分頃、米ニューヨーク・マンハッタンのランドマークの一つであるフラットアイアンビル付近。早朝から集まった数百人が一斉に日食観測用のメガネをつけて空を見上げた。すでに太陽を覆い始めた月は、滑るように太陽を隠していった。約1時間後、ついに太陽が細い三日月のようになり、あたりが夜のように暗くなった。多くの市民の拍手と歓声。宇宙が地球に送った神秘的な贈り物「皆既日食」を目の当たりにした瞬間だった。
皆既日食は、太陽と月と地球が一直線に並び、地球から見た太陽が月と重なって完全に隠れる現象だ。北米大陸では2017年8月以来7年ぶり。今回の日食は、メキシコのマサトランから北東の対角線上に米国のテキサス、オクラホマ、アーカンソー、ニューヨーク、メイン州など複数の地域で順次起こり、関心が高まった。さらに、今年は月が地球に近づき、より鮮明に観測された。次の皆既日食は2044年なので、今回は「見逃せない」機会とされた。ABC、CBS、NBCなど主要放送局は朝から特別番組を編成して中継した。
実際、ニューヨークでは約9割だけ太陽が隠れ、観測のベストエリアではなかった。しかし、普段から観光客があふれる都市らしく、セントラルパークやタイムズスクエアなど、あちこちに人が集まった。特に、サミットやエッジ、ワンワールドなどニューヨークのビッグ5の展望台は、早くから予約が埋まった。公共図書館などでも、先着順で配布される日食観測用メガネを受け取ろうとする長い列ができた。フランス人観光客のフローランさん(41)は、「ニューヨークで皆既日食を楽しめたのは奇跡のようで驚きだ」と話し、「一生忘れられない思い出になるだろう」と喜んだ。
今年の皆既日食は、金銭的に見ても盛況だった。関連業界では、観測旅行や宿泊などで60億ドル(約8兆1300億ウォン)にのぼる経済的波及効果をもたらしたと予想している。米全域から約500万人が押し寄せたため、一部の地域では非常事態を宣言するところもあった。ソーシャルメディアなどでは、11月の大統領選挙と今回の自然現象を結びつける占星術師が殺到し、アーカンソー州では日食の時間に合わせ500組が合同結婚式を挙げた。
皆既日食は、科学的にも意味のある現象だ。「宇宙のなぞ」である太陽の外層大気の最も外側のガスの層であるコロナを見ることができる貴重な機会だ。米航空宇宙局(NASA)は研究のためにバージニア州ワロップス飛行施設からロケット3機を打ち上げた。
金玹秀 kimhs@donga.com