
「独裁者になることはない。再選初日だけを除いて...」
最近、再選に成功すれば、大統領権限を強化するという趣旨の発言を繰り返し、「政治報復」「独裁」の懸念を呼んでいるトランプ前米大統領が5日、FOXニュースのアンカー、ショーン・ハニティー氏との対談でも「独裁」を口にした。再選すれば、就任初期にしばらく独裁をする可能性があるという意味なので、かなりの波紋が予想される。
最近、支持率劣勢のバイデン大統領は、トランプ氏のこのような行動を強く批判した。共和党内の反トランプ陣営でも、自分たちの大統領選出馬を正当化する大義名分としてトランプ独裁論を言及している。しかし、バイデン氏がトランプ氏との仮想対決はもとより、共和党のさらなる大統領候補であるニッキー・ヘイリー元国連米大使との対決でも押されるという世論調査が公開された。
● トランプ氏「就任初日を除いて独裁」
トランプ氏は、共和党大統領候補を選ぶ予備選挙の最初の開催地である中部アイオワ州で行われた同日の対談で、「報復のために権力を乱用しないことを約束するか」と問われ、「就任初日を除いてそうする」と答えた。そして、「国境を閉鎖し、石油を掘削する」とし、「その後、私は独裁者になることはない」とも述べた。不法移民の取り締まり強化、バイデン政権のエコ政策の白紙化など、自身の公約履行のために独裁者という批判を覚悟するという意味とみられる。
トランプ氏は2、3日の両日、支持層に「バイデンは米国の民主主義の破壊者だ」と訴えた。バイデン氏が最近、自身を批判して使った表現をそのまま使用した。トランプ氏は、「バイデンは政府と法を武器にして政敵を攻撃しようとしている」とし、今年に入って自身への4件の刑事起訴がその証拠だと主張した。先月には、「再選すれば、害虫のように米国に住んでいる共産主義者、マルクス主義者、ファシスト、急進左派を根絶する」とも主張した。
バイデン氏は直ちに反撃に出て、高齢、健康不安説などの論議にもかかわらず、自分が再選に挑戦するのはこのように公然と独裁を言及するトランプ氏の当選を阻止するためだと主張した。バイデン氏は、「トランプが出馬しなければ、私が出馬したかどうか分からない。彼に勝たせることはできない」と主張した。
米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ロバート・ケーガン氏も、「トランプ氏が大統領選に勝利すれば、史上最も強力な大統領になり、大統領職が独裁に変わる可能性がかなり高い」と強調した。
● ヘイリー、バイデンに4ポイントリード
民主党支持層の一部では、「トランプ2期」を阻止するためにバイデン氏を押すより、最近「トランプ対抗馬」として浮上しているヘイリー氏を支援するのが効果的だという動きも出ている。「バイデン再選」よりも「トランプ再選防止」が優先ということだ。
このような文脈で、民主党を支持してきたソーシャルメディア「リンクトイン」の共同創業者リード・ホフマン氏は最近、ヘイリー氏の選挙運動を支援する「スーパーパック(PAC・政治活動委員会)」に25万ドル(約3億3千万ウォン)を寄付した。支持政党ではなく、ライバル政党の候補に寄付するのは異例のこと。
世論調査会社「ハリスX」が5日に発表した来年の大統領選の仮想2者対決調査の結果、ヘイリー氏は41%の支持を得て、バイデン氏(37%)を4ポイント差で押さえた。同調査で、バイデン氏はトランプ氏には40%対47%でさらに大きく差をつけられた。
共和党内の代表的な反トランプのリズ・チェイニー前下院議員は、「トランプ氏が再選すれば、米国の民主主義を独裁体制に換えるかもしれない。トランプ氏の再選を阻止するために何でもする」と述べた。チェイニー氏は、共和党支持層の票を分散させるために第3党から出馬することも検討していることを明らかにした。
ワシントン=ムン・ビョンギ特派員 パク・ヒョモク記者 weappon@donga.com