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最低賃金の審議開始、インフレや失業を誘発する議論になってはならない

最低賃金の審議開始、インフレや失業を誘発する議論になってはならない

Posted June. 10, 2022 09:07,   

Updated June. 10, 2022 09:07

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最低賃金委員会が昨日、来年度の最低賃金の審議を本格的に開始した。経営界は、零細自営業者や中小企業が耐えられないほど最低賃金が高まった状態であるだけに、今年の最低賃金9160ウォンを来年まで維持しようと主張する。二大労総は、14年ぶりの最高物価のため、低賃金労働者らが苦しんでいるとし、1万1860ウォンへと30%引き上げようという。双方の差が2700ウォンと大きく開き、いつにも増して激しい議論が予想される。

韓国の最低賃金は過去数年間、類がないほど急激に上がった。2016年から昨年までの最低賃金の累積引上げ率は44.6%で、米国や英国、ドイツ、フランス、日本の5つの先進国の平均引上げ率の4倍だ。労働者の平均賃金比最低賃金の割合も、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最上位圏だ。また、地域や年齢などによって最低賃金を別に定める米国やカナダ、日本などとは異なり、韓国ではすべての労働者に同じ基準が適用される。

最低賃金の過度な引き上げは、すでに大きな副作用を産んでいる。今年3月、全体就業者のうち自営業者が占める割合は、統計を取り始めて以来初めて20%以下に落ちた。最低賃金の上昇で苦しんでいた自営業者らが、コロナ禍の長いトンネルを通りながら、事業を畳んだためだ。一方、職員を雇わない「独り社長」は増え続けている。賃金負担のために無人キオスクを入れておき、家族が店に出て働く代わりに古い職員を解雇したのだ。食材価格の高騰で困難に直面している飲食店やカフェの店主たちの間では、「最低賃金を受け取る職員ほども、家に持って帰れない」という不満が出ている。一方、公務員と公企業、大企業職員は最低賃金引き上げの衝撃をほとんど受けなかった。

4%台後半と予想される今年の消費者物価の上昇率は、最低賃金の決定に考慮されなければならない要因だ。しかし、スタグフレーション(景気低迷の中での物価上昇)の危機の中で、物価上昇を上回る最低賃金の引き上げは最悪の選択になりうる。過度な最低賃金の上昇は、企業の負担を増やし、サービス・商品価格の引き上げにつながる可能性が高い。物価上昇の悪循環が始まり、消費者が財布の紐を締めて景気が悪化すれば、青年や女性、高齢者など労働市場の弱者の雇用が一番先に脅かされることになる。労使共に共生の知恵が必要な時点だ。