
『グレン・グールドのピアノ』の前半部は、『バガボンド』に似ている。ピアニストのグレン・グールドの簡略な成長期に続く第2幕で突然、彼より1年早く生まれた視覚障害者の調律師シャルル・ヴァーン・エドクィストの人生を描く。次の章の主人公はグールドが10才のころ、工場で作られた1台のピアノだ。著者は、約20年後に3者が遭遇し、最高の音を奏でた10年間をクライマックスに持ってきてそれぞれの人生を紹介した。グールドのために1台のピアノを数千回も調律したエドゥクィストがそうしたように、ピアノ「CD318」は寡黙な生命体のように描かれる。
原題『A Romance on Three Legs』はグランドピアノの3脚と共に3通りの人生の短い出会いを指す。中心はもちろんグールド。同書は、何度も聞いて食傷気味のグールドの潔癖の人生に新しい材料を加えて興味深く再構成しただけかもしれない。しかし、「低音のバックなしにグールドの指が下す命令に注意深く反応した」唯一のピアノ、両者を媒介した明敏な調律師に対するスポットライトは、グールドのレコードを聞く幸福の幅を広げる。
取り消しされた遠征コンサートに単独で送られたピアノが事故で破損し、彼らの恋愛は世の中のすべての恋愛のように予告なく終わった。しばらくして調律師エドクィストは、グールドの訃告にラジオのニュースで接する。新しい部品で修理され、残されたピアノの後日談は、関羽を失った赤兎馬を連想させる。一人の演奏者があるピアノに出会って、心の中でいつも夢描いた音を実現させるということは、大変な奇跡だ。グールドは「そのピアノを直観で見初めた」と言った。すべての恋愛がそのような直観だ。
손택균기자 ソン・テッキュン記者 sohn@donga.com






