韓美(ハンミ)薬品の林盛基(イム・ソンギ)会長は、中央(チュンアン)大学薬学部を卒業した後、27才だった1967年、ソウル鍾路(チョンロ)5街に自分の名前をつけた林盛基薬局を開いた。当時では珍しく性病治療薬を扱って有名になった。ベトナム戦争が真っ最中だった時代、軍服務中にかかった「恥ずかしい病気」で悩んだ若い男性たちには「治療の聖地」だった。彼の名前(ソンギ)が独特の営業方法(性器=ソンギ)とマッチしたため改名したのではないかと誤解も生んだ。
◆1973年に韓美薬品を創業した林会長は、平素から「世界的な新薬を作り出すことが生涯の夢だ」と話していた。韓美薬品は2010〜2011年、赤字の中でも年間800億ウォンを研究開発(R&D)に投資した。2014年には年間営業利益36億ウォンの38倍である1354億ウォンに投資額を増やした。1年365日、灯りの消えない研究センターは、韓美薬品が昨年、世界的な製薬会社のベーリンガーインゲルハイムやサノフィ、ヤンセンなどと約8兆ウォン規模の新薬技術の輸出契約を相次いで成功させた。
◆林会長が4日、韓米サイエンス(韓美薬品の持ち株会社)の個人株式のうち約90万株(市価1100億ウォン台)を約2800人の社員に無償贈与するという「ボーナス」計画を発表し話題だ。社員が受け取る新年の「プレゼント」は月給の1000%で、1人当たり平均4000万ウォンになる。別途の200%の成果給を合わせれば、1年分の年俸をさらに受け取ることになる。林会長は、「苦しい時に努力して研究開発投資を可能にした社員への『心の借金』を返すための決定だ」と話した。
◆英米式の株主資本主義は、株主に対する配当拡大を重視する。一方、ドイツ・日本式の「利害関係者資本主義」は、株主のほかに社員や顧客、下請け業者にも配慮するのが特徴だ。株主資本主義の長所も無視できないが、社員の志気が下がれば企業の持続的発展は難しい。世界的な製薬会社の敷居に近づいた韓美薬品の林会長の決断は、成長と株価上昇の果実をオーナーだけでなく社員とも共有する新しいモデルを提示した。
権純活(クォン・スンファル)論説委員shkwon@donga.com
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