00年イスラエルのある託児所に相当数の親が、定時の午後6時を過ぎてから子どもを迎えにきた。同じことが繰り返されると、託児所側は親が遅刻するたびに、10分単位で罰金を賦課した。しかし、かえって遅れて子どもを迎えに来る親が増えた。保育士に対しての申し訳ない思いから決まった時間に来るために努力していた親たちが、罰金を課してからは免罪符をもらったかのように行動した。驚いた託児所は罰金制度をなくした。しかし、親の遅刻は減らなかった。保育士への申し訳なさ、時間を守らなければならないという常識など、内的規範が罰金制度によって消えたのだ。
◆「予想どおりに不合理」の著者ダン・アリエリー米デューク大学教授は、「人を動かす力には『社会規範』と『市場規則』の二つがあるが、社会規範よりは市場規則の影響力が大きい」と話す。社会規範が働く分野も一度市場原理に露出されると、力を失ってしまうという説明だ。市場原理は人類がこれまで発見した最も優れたシステムの一つだ。しかし、ルールが公正である時にのみそうだといえる。間違った市場原理は目標達成を不可能にするだけでなく、うまく機能していた社会規範を崩壊させることもある。
◆きのうは立春大雪だった。今年に入って最大の大雪が降った。山と川に降った雪は美しい景色になるが、都市に降った雪は生活を不便にする。全国の道路が凍りついたり、ぬかるみになった。車両の孤立、滑りが原因の事故が相次いだ。凍った路面で転倒した患者で病院の救急室はごった返した。主要幹線道路の除雪は地方自治体の責任だとしても、自分の家の前の雪かきもしない家が殆どだった。きれいに雪かきされたところを見ると、客を迎える店舗や建物管理人がいるビルが殆どだ。雪かきに市場原理だけが働き、社会規範は姿を消した。
◆米国は雪かきの共同体意識が生きている国だ。自分の家の前の雪かきは芝生狩りや落ち葉の掃除のように、住民がやってしかるべきことと認識されている。お年寄りは隣の青少年を雇ってでも必ず雪をどける。自分の家の前の雪かきが終わると、誰が先と言うまでもなく、皆が共用駐車場へ駆けつけて雪かきをする。お金より怖い社会規範の力だ。一部では米国で道を行く人が雪で滑ったら、道に面した家の人が訴訟を起こされるために雪かきをするのだと解釈する。しかしそれよりは長い慣習と見た方が妥当だ。最近、韓国では雪かきを義務化する条例制定からさらに一歩進んで、雪かきをしなかった家に対しては過料を科す案まで検討されている。過料が託児所の罰金のように雪かきをしなかった家に免罪符を与えるのではないか心配される。雪かきこそ、マイケル・サンデル教授が言う「お金で買えないこと」ではないか。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






