大韓民国の行政の中心部であるソウル世宗路(セジョンロ)の政府中央庁舎に不審者が侵入した。60代のキム容疑者が、裏門を警備する機動警察、玄関に設置されたセキュリティチェック、出入口の統制するセキュリティ・ゲートの3重のセキュリティシステムを無用の長物にした。警備員は、デザインが違う偽の身分証を見抜けないほど警戒がずさんだった。セキュリティシステムは作動しなかった。休日だったとは言うが、休日に押し入られたなら、結局はすべてやられるということだ。いくら強い鎖であっても、輪の一つが切れれば大事故につながる。
キム容疑者が、ガソリンが入ったペットボトルをリュックサックに隠し、政府庁舎の7階と18階を歩き回っても怪しまれなかった。ガソリンをまいて火をつけたのに被害が小さかったのは幸いだった。全国に散在している政府省庁のセキュリティシステムを再点検しなければならない。特に、政府総合通信網はネットワークで結ばれているので、一つの省庁が攻撃を受けた場合、総体的な崩壊につながる恐れがある。
国家と社会システムに大きな穴が空いている兆候はあちこちで感知されている。今月初め、北朝鮮兵士が東部戦線の鉄柵を乗り越えて哨所と警備隊のところまで来たが、反応がなかったので、将兵がいる兵舎のドアを叩いて亡命するほど、最前線の警戒態勢は弱点だらけだった。休戦ラインに鉄条網と監視哨所、監視カメラが網のように敷かれているにもかかわらず、北朝鮮軍の少年兵が兵舎のドアを叩くまで分からなかったというのは、いかなる弁解も通用しない。「ノック亡命」という言葉が、軍の穴が空いた警戒態勢を嘲弄する流行語になっている。
政府庁舎と休戦ラインの警備・警戒の杜撰さは、公職規律の弛緩と無関係ではない。李明博(イ・ミョンバク)政権が任期を4ヵ月残した時点で、公職者の関心はただ次期政権に向かっている。任務が疎かになるなら、今後どのようなことが起こるか分からない。李政府は、公務員の勤務規律を任期最後の日まで引き締めるという覚悟で臨まなければならない。
国防部は15日、北朝鮮軍の亡命事件を「警戒作戦の失敗」と規定し、師団長ら3人の職務解任をはじめ、15人を懲戒処分にした。軍規事故が起これば、関係者の問責だけでは国民の安保不安は払拭されない。国防システムの改革とともに精神武装の強化が切実だ。北朝鮮は、年末の韓国の大統領選挙を控え、選挙介入のための挑発の動きを見せている。北朝鮮に批判的な報道機関の位置座標まで公開し、テロの脅迫をする。政府は安保と治安維持に対する覚悟を新たにし、行動に移さなければならない。






