エリザベス1世(1533〜1603)は、英国人が最も尊敬する国王を選ぶアンケート調査で、いつも1位に上がる。重商主義政策で国庫を増やし、スペイン無敵艦隊を撃破し、シェークスピアが活躍する英国の黄金時代を開いた。エリザベス1世の成功的な治世は、明るくかっ達な性格と優れた頭脳に裏づけられていた。エリザベス1世は、多くの試練の中でも悲観したことはなかった。歴史と哲学に精通し、ラテン語、ギリシャ語、フランス語など5ヵ国語を駆使した。エリザベス1世は、王位簒奪の陰謀にも打ち勝った。
◆セヌリ党大統領選予備候補の朴槿恵(パク・グンヘ)氏が、自分の役割モデルとしてエリザベス1世を挙げたことで、エリザベス1世のリーダーシップが注目されている。朴氏は、エリザベス1世について、「英国を破産直前から『太陽の沈まない国』に築き上げ、不幸を経験したことで他人を思いやることができ、常に寛容の精神を持って合理的な方法で国政を担った」と評価した。親の悲劇的な死を経験しただけでなく、女性であり、独身である政治指導者という点で、両者の間には共通点が多いことも事実だ。
◆エリザベス1世の幼少時代は暗かった。母親のアン・ブーリンが、姦通と反逆の罪で処刑され、「王女」の称号もなかった。腹違いの姉のメアリがいつも彼女をいじめた。何よりつらいことは、父親の無関心だった。ヘンリー8世の息子への執着は有名だが、娘には冷たかった。エリザベス1世は、ろくに着る服も与えられなかった。このような悪条件の中で、エリザベス1世は節制力を養い、君主としての資質を備えていく。女王になった後も楽しいことばかりではなかった。女王は晩年、「他人がかぶった王冠はよく見るが、実際にかぶってみると、それほど快いものではない」という言葉を残した。
◆エリザベス1世は原則を重視したが、原則に縛られることはなかった。海賊に提督の地位を与える思考の柔軟さがあった。多彩な象徴操作を通じて臣下と人民の心をつかむ疎通の鬼才だった。エリザベス1世は、女性性を統治に活用する術も知っていた。華やかな宝石とドレスで美しく着飾り、「英国と結婚した」と宣言し、自分に聖母マリアのような権威を与えた。家庭の事情が似ているとか、模倣するだけでは、韓国のエリザベス1世にはなれない。エリザベス1世の資質と風貌を真に自分のものにしてこそ、成功することができる。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






