8日の夜。美味しそうな匂いが鼻先を刺激した。間違いない。8キロ離れたところの匂いも嗅げる俺様だ。どんぐりさえも見つからないのに、空腹を堪えて夜行でもしてみるか。おいらは今年3才。全長1メートル、体重82キロの立派なオスである。ある程度は力も付いてきた俺だが、北漢(プッカン)山での生活はなかなか厳しいものがある。獲物を見つけるのも大変なのに、競争者が多すぎる。昨年を基準に、北漢山だけでイノシシが100〜150頭が棲息しているそうだ。
10キロは軽く歩いたようだ。遠くに国民(クンミン)大学が見下ろせる城北区貞陵洞(ソンブック・チョンルンドン)の裏山を過ぎて三清(サムチョン)トンネルの上の山道を渡った。あれ!森が終わっている。だが2車線道路に人気もない。昌徳(チャンドク)宮の西にある民家も静かだ。昌徳宮の西北に伸びている排水路を渡ると後苑だ。これが王様が住んでいた宮の裏庭なんだな。木のあっちこちに自分の臭いを残して縄張りの印をしておいた。
しまった!9日の朝、自分の存在に気がついたパトロール要員が監視カメラの映像から午前5時半に昌徳宮の西北門を通る自分の姿を確認したそうだ。午前9時半、警察と消防が緊急出動した。正午からは猟師と猟犬8匹が見えた。午後2時10分頃、やつらにばれた。猛烈に追いかけてくる。10分で新璿源殿の裏側で捕まってしまった。抵抗してみたけど、訓練されたこいつらにはかなわなかった。首元が熱くなり、目が焦点がぼやけてくる…。
9日、ソウル市鍾路区臥龍洞(チョンノグ・ワリョンドン)の昌徳宮に現われたイノシシが猟犬に噛まれて死んだ。この日、昌徳宮側は後苑を封鎖して捕獲に乗り出した。イム・スンチョル野生生物保護管理協会ソウル支会会長は10日、「イノシシは警察や119が捕獲すると焼却し、一般人が捕まえると捕まえた人の所有になる」と説明した。
都心まで降りてくるイノシシは主に1〜2才の子イノシシが中心で、パワーが足りないうえに獲物が不足するのが原因だという。環境部自然資源課の関係者は、「現在、都心部を中心にイノシシの棲息に関する精密な実態調査を実施しており、年末までには結果が出るだろう」とし、「都心では銃器の代わりに他の道具で捕獲する方法を設けている」と話した。
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