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[オピニオン]閉館する「旧映画館」

Posted July. 13, 2012 04:16,   

韓国映画は1960年代に1度全盛期を迎える。「あの空にも悲しみが」、「憎くてももう一度」などのヒット作が話題になった。映画館の前ではおめかしした男女が長い列を作った。米国のハリウッド映画も黄金期を謳歌した時代だった。「アラビアのロレンス」、「サウンド・オブ・ミュージック」などの大作が国内で上映され、大盛況だった。この時代を生きた世代に映画鑑賞はほぼ唯一の文化生活だった。あらゆるものが不足した時代、映画は渇望と苦しみを癒す脱出口だった。

◆当時の映画館は1つ2つ姿を消していった。一つの映画館でいくつかの映画を上映するマルチフレックス時代が到来したためだ。団成社、スカラ劇場、大韓劇場などの古くなった映画館が壊され、新しい建物が建てられた。1910年代に建てられた国都劇場のオーナーは、近代文化遺産に指定されることを憂慮して、映画館を壊した。近代文化遺産になれば再建築が不可能になり、財産上の不利益を被ることを心配して壊してしまったのだ。映画館が現代式の建物に変わり、昔の思い出も共に消滅した。

◆ソウル西大門区錧芹洞(ソデムンク・ミグンドン)の西大門アートホールが、建物の撤去のために11日に閉館した。1963年に華陽(ファヤン)劇場という名前でオープンしたこの映画館は、全国で唯一残された単館系映画館だった。この映画館も、マルチフレックスの映画館に押され、辛うじて命脈を保ち、08年に高齢者専用映画館に転換した。高齢者を対象に2000ウォンの入場料で、50、60年代の映画を上映した。ポップコーンではなく、もち3個を1000ウォンで販売した。最後の日、映画館を訪れた多くの高齢者が「シネマ天国」を失うことを寂しく思い、涙したという。

◆文化体育観光部が実施した「2010年文化芸術郷愁実態調査」で、60代以上の年間芸術イベントの観覧率は28.6%に止まった。20代の92.6%に比べて3分の1にも満たない。高齢者は余暇の時間が多いが、文化生活には疎く、それだけの経済的余裕もないケースが多い。文化芸術を鑑賞するには、別途に文化芸術教育を受けることが必要だ。貧しい時代を生きた彼らには、そのような機会も与えられなかった。高齢化社会を迎え、文化は高齢者の生活の質を高める有力な手段だ。「旧映画館」の撤去は、逆説的に高齢者層が文化的に疎外され、冷遇されていることを示す出来事だ。

洪賛植(ホン・チャンシク)首席論説委員 chansik@donga.com