先月27日、米ワシントンの刑事法廷に、同じプラスチックフレームのめがねをかけた黒人男性5人が入ってきた。銃で5人を殺害した容疑がもたれている被告たちだった。唯一容疑を認めた被告の一人に対し、検事が尋問した。「残りの4人は、かつて、めがねをかけたことがありますか?」。その被告は、「めがねをかけたのを見たのは、今日が初めてだ」と答えた。その4人のめがねは全て、度数の無い「小物」だった。凶悪犯らは、優しく弱く自分を見せようと、体型より大き目のスーツを着たり、髪型を端正に刈り取る手口をたびたび使ってきた。黒人容疑者らが、プラチックフレームのめがねをかけば、「より知的で正直に見られ、凶悪なイメージが弱まる」という米犯罪心理学会の研究結果(08年)もある。
◆陪審員裁判の多い米国は、「同情誘発」ファッション分野をリードしている。二人のボーイフレンドと共に、産みの母を殺害した17歳の女、バレサ・ロビンソン事件は、この戦略が的中した事例だ。検察は、バレサを主犯としたが、弁護士は、ボーイフレンドらに丸め込まれた「純情で可憐な少女」と仕上げるのに成功した。陪審員の前に立ったバレサは、白のセーターに、膝を覆う栗色のギャザースカートをまとい、足先の丸い靴を履いた。彼女は、肩まで伸びた髪の毛を頻繁に撫でながら、そっと耳を露にした。バレサの母方の祖母は、「悪口ばかり言っていた孫娘が、別人になった」と主張した。共犯らには、それぞれ死刑や25年刑が言い渡されたが、バレサは13年刑の「善処」が言い渡された。
◆1997年、韓宝(ハンボ)グループの鄭泰守(チョン・テス)会長が、「車椅子」に乗って出頭してから、車椅子や患者服姿は、検察に呼ばれて出頭する財閥トップらの「ドレスコード」になった。今年1月、泰光(テグァン)グループの李善愛(イ・ソンエ)常務の出頭の際は、簡易ベッドが登場した。学歴偽造で物議をかもし、行方をくらました申貞娥(シン・ジョンア)氏は、普段の華やかなスタイルの服装の代わりに、黒縁めがねに灰色Tシャツの姿で現れた。申昌源(シン・チャンウォン)は、誰が見ても脱獄囚のようなけばけばしい柄のTシャツを着た状態で検挙され、少なくとも服装では反社会性を隠さなかった。
◆判事らは法廷で様々な役者に出会う。あえて入れ歯を取って、ぶつぶつと最終陳述をする企業会長、いきなり倒れ、救急隊員がついたら、生死の境目をさまよった表情で目を覚ます詐欺師、頭を下げたまま、鋭い目つきをやり取りする暴力団員ら。被告らが法廷で見せるファッションや芝居の前で、事件の実態を巡る裁判官の判断がぶれるようなことがあってはないだろう。
シン・グァンヨン社会部記者neo@donga.com






