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[オピニオン]FTA、栄養剤と腹痛

Posted January. 03, 2012 07:47,   

ブルガリアの衣料メーカー、ベガテックスタイルは昨年、大邱(テグ)の中小企業、テチャン貿易から、ポリエステルニットの生地12万ドル分を購入した。一昨年の購入額5万3000ドルの2倍強の金額だ。ベガが購買量を増やしたのは、従来10%だった生地の関税が、昨年7月、韓EU(欧州連合)間自由貿易協定(FTA)の発効を受け、廃止となったからだ。生地の価格が下がり、ベガも同様に、価格競争力ができ、販路が拡大されたのだ。テチャン貿易で海外営業を担当している朴チョンホ課長は、「ベガのほうから、今年の注文量を昨年の2倍水準へと再び増やす動きがある」と、期待に胸を膨らませている。

◆昨年7〜11月、EU向け韓国の輸出は前年同期比5.1%減少した。財政危機で、欧州経済が冷え切ったためだ。特に、景気変化に敏感な船舶や半導体、携帯電話の打撃が大きかった。しかし、そんな中、「韓EU間FTAの恩恵業種」という自動車や石油製品、バッテリーの輸出は大幅に増加した。輸出企業へのKOTRAのアンケートの結果は、さらに明確だ。79%が、「FTAはビジネスにプラスにはたらいている」と明らかにしており、68%が、「関税撤廃のおかげだ」と回答した。FTAについて、様々な意見が出ているが、交易現場ではその効果を実感している。

◆一方、高級自動車や半導体、製造装備などは、EUからの輸入が大幅に増加した。有名ブランドのハンドバックの輸入は70%も増加した。このようにFTAは、韓国の輸出だけを増やしたわけではなく、相手国からの輸入も拡大させる。FTAを通じ、韓国だけが得をするような図式であれば、どの国も韓国とはFTAを交わそうとはしないだろう。関税または、非関税障壁のため、交易できなかった品目を活発に取引させるのが、FTAの元来の狙いだ。

◆通商が拡大すれば国際分業が高度化し、国民経済の生産性が高まり、結局市民の所得や生活の質が向上する。しかし、比較優位を確保した産業が大きな恩恵を享受する代わりに、比較劣位産業は萎縮するのが交易の本質だ。「競争や開放の政策」であるFTAだけでは、「分配の問題」を解決することはできない。FTAで拡大させたパイをうまく分け合うためには、別途の政策を組み合わせることが必要だ。しかし、だからといってFTAをあたかも悪者扱いする必要はない。腹痛の治療にならないからといって、栄養剤を悪者扱いする必要もないではないか。

虚承虎(ホ・スンホ)論説委員 tigera@donga.com