「私も人間だ。他の選手と同じようにミスをする」(ウサイン・ボルト)
「ボルトは超人的な選手だ。しかし人間である。人間が犯したミスだ」(ディック・フォスベリー)
28日、大邱(テグ)世界陸上選手権大会男子100メートル決勝で、「雷」ウサイン・ボルト(25=ジャマイカ)が誰も予想しなかったフライングで失格となったのは、「ただのミス」という見解が多く、本人もそう語っていた。国際陸上競技連盟(IAAF)の公式パートナーアディダスの招待で世界選手権大会期間中に大邱に訪れた走高跳びの背面跳びを開発したフォスベリーも29日、同じように語った。
しかし、「ただのミス」と言い放つには、あまりにも惜しい今回の失敗。何故そのようなミスが起ったのだろうか。
●普段からスタートが遅いため?
ボルトのフライングは普段からスタートが遅いことによるプレッシャーのため、という分析がある。28日の100メートル決勝の際、ボルトのスタート反応時間はマイナス0.104秒と記録された。銃声が鳴る0.104秒前に動いたという意味だ。08年、北京五輪の前まで主に200メートル走の選手だったボルトが100メートルまで走るようになったのは、スタート能力を育てるため、という話まで出た。本当にそうだろうか。
27日の予選の際、ボルトの出発反応時間は0.153秒で6組8人中3番目に早かった。準決選は0.164秒。やはり8人のうち3番目に早かった。ボルトは09年ベルリン世界選手権ではスタート反応時間が5位だったが、爆発的な後半スパートで世界記録を立てて優勝した。ボルトのスタートが遅いというのは説得力に欠ける。
●世界記録への欲心のため?
彼自身が保有している世界記録を破ろうとする野心が先走った結果、フライングをしたとする見方もある。強力なライバルと取り上げられたタイソン・ゲイ(米国)とアサファ・パウエル(ジャマイカ)が出場を諦め、1位がほぼ確実視される状況で、ボルトが狙えるのは世界記録だけだったという説だ。しかし、ボルトは先月モナコで行われたIAAFダイヤモンドリーグ出場を控え、「私自身に嘘をつくわけにはいかない。今の体調では世界記録を破るのは難しい。世界選手権ではタイトル防御が目標だ」と語っていた。
ボルトの今季最高記録は9秒88。シーズン5位内にも入れない記録で、自己ベスト(9秒58)に0.3秒も遅れる。「全盛期の体調を取り戻すには、さらに時間が必要だ」と語ったボルトが世界記録を出そうとしてフライングしたというのも、腑に落ちない部分だ。
●憶測も提起
納得のいく説明がない中で、突拍子のない推測も出ている。ボルトがわざと失格に遭ったというものだが、前後の事情はこうだ。IAAFは今大会から初めて「ワンストライクアウト」ルールを適用している。フライングした場合、誰であろうと理由を問わずトラック外へ追い出す。IAAFは2年前、ベルリンで行われた第47回総会で、10種競技を含めた複合競技を除いては、フライングした選手を即座に失格処分する方針を固めた。このルールは昨年の1月1日から導入されたが、世界選手権で適用されたのは今回が初めてだ。それまでは最初のフライングでは失格にならず、2回目のフライングから失格させた。
DPAの報道によると、米国大学体育協会(NCAA)はずっと以前よりワンストライクアウトルールを導入してきたため、米国選手は相対的にこのルールに慣れているということだが、ここから憶測が生じた。ワンストライクアウトルールに不満を持つボルトが議論を呼び起こすため、故意に不正出発したという説だ。
●ボルト失格の痛手
予期できなかったボルト失格に影響されたせいか、100メートル決勝に臨んだ残りの7人の平均出発反応時間は歴代大会中最も長かった。スタート反応時間が最も速かったネスタ・カーター(ジャマイカ、7位)が0.154秒を記録したのを含め、平均0.166秒だった。07年大阪大会の時は平均0.153秒、09年ベルリン大会時は平均0.139秒だった。ボルトが100メートルで空しく失格となると、残りの200メートルでボルトの失格の有無を賭けたギャンブルまで登場した。
英国のギャンブル専門サイト、ウィリアムヒルは、「ボルト・スペシャル・ベティング」を打ち出した。ボルトの200メートル失格の有無にお金をかけろというものだ。優勝確立や勝敗でなく、失格の有無をめぐった賭け事を勧めるのは非常に異例だ。
様々な疑問や憶測やトラブルを沈静化するには、当事者のボルトが200メートルで優勝するしかなさそうだ。ボルトはエージェントを通じ、「200メートルに集中する。最善を尽くして準備する」と語った。
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