インドのタージマハルやペルーのマチュピチュの上空には、歴史遺跡を保存するために飛行禁止区域(No-fly zone)が設定されている。米ワシントンのホワイトハウスと国会議事堂の建物の上空、英ロンドンのバッキンガム宮殿と官庁街・ホワイトホールの上空も、国家安全保障のために飛行禁止区域に指定されている。韓国にも、大統領府を中心に一定の半径で引かれた首都圏飛行禁止区域がある。17日、国連安全保障理事会が、リビア領空を飛行禁止区域に設定した。民主化を求める自国民のデモ隊を戦闘機で爆撃するカダフィ大佐の蛮行を止めさせるための措置だ。
◆冷戦終息後、国家の主権を制限する初の飛行禁止区域は、91〜03年、イラク領空に設定された。イラクのサダム・フセイン大統領が、北部クルド人に戦闘機で爆撃を加えると、米国、英国、フランス、トルコがイラク北部を飛行禁止区域に設定した。しかし、この措置が、国連安保理の決議なく行われたため、ブトロス・ガリ国連事務総長は不法だと非難した。安保理の明示的な決議による初の飛行禁止区域は、93〜95年、セルビア人のコソボ人虐殺を防ぐためにボスニア・ヘルツェゴビナ領空に設定された。
◆リビア内の油田開発と建設プロジェクトなどの利権を持つ中国とロシアが当初の反対の立場から棄権に方向を旋回したのは、アラブ連盟の圧力のためだ。両国は、国家利益だけ考えていたが、国際社会の圧力にひざまずいたのだ。飛行禁止区域は、非武装地帯と似た面がある。軍事的に対立する一方の当事者が禁止区域を侵犯すれば、もう一方の当事者の軍事的報復に遭う可能性があるが、そうしない限り問題はない。本格的な軍事介入が難しい時に、主に使われる方法だ。
◆国連が指定した軍隊は、リビア領空を飛ぶ空軍機を撃墜する権利を持つ。戦闘機を動員した監視活動に入る前に、事前作業として、国連側の戦闘機を攻撃できるリビア側の防空網を壊すための作戦が開始される。米海軍が保有する航空母艦「エンタープライズ」がリビアに移動している。英国とフランスも加勢する準備ができている。反乱軍の最後の砦であるベンガジまで陥落した場合、無慈悲な報復が始まり、カダフィ大佐の公言どおり、血の川の水が流れるかも知れない。リビア領空の飛行禁止区域の設定が、消えつつあるリビアの民主化の火をよみがえらせることができるか見守る。
宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com






