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[社説]「金持ち増税」が庶民寄りになれない理由

[社説]「金持ち増税」が庶民寄りになれない理由

Posted January. 19, 2011 03:17,   

1970年代、英労働党政府は、庶民向け社会保障制度の充実化を図ると主張し、高所得者に対し最高83%の累進所得税を課した。最初は多くの国民が支持したものの、その結果は惨憺たるものだった。金持ちらは税金の少ない外国に移り住み、企業の海外への脱出が相次いだ。経済が低迷し、かえって全体的税収が減り、社会保障制度も後退した。

盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、2%の金持ちから税金を取り立て、98%の国民のために使うと主張し、総合不動産税の新設や譲渡所得税の重課税という「税金爆弾」を投げかけた。しかし、不動産価格は安定どころか、ソウル江南(カンナム)地域を中心に始まった住宅価格や土地価格、家賃高騰の勢いが、他の地域へと早いテンポで広がった。中間層や庶民は不動産価格の攻防の苦痛に苦しんだ。不動産価格が落ち着いたのは、階層間対立をあおった税金爆弾ではなく、住宅供給の拡大や少子高齢化などに伴う需要減少のためだった。

野党から、「無償福祉シリーズ」の財源調達のための「富裕層への増税」の主張が出ている。民主党の鄭東泳(チョン・ドンヨン)最高委員は、「普遍的福祉は、金持ちの増税の中から財源を工面していかなければならない」と語り、富裕税の導入を主張している。千正培(チョン・ジョンベ)最高委員は、上位階層を対象に、従来の所得税に一定の割合で割り増しする、フランス流社会福祉税の必要性を持ち出している。進歩新党は、「普遍的福祉に向け、富裕層に対し、税金爆弾を抱かせるつもりだ」と論評した。

「無料福祉セット」は、必然的に税金負担を大幅に増やさざるを得ない。金持ち増税論は、「福祉は大幅に増やしても、歳出を巡る構造調整により、財源を工面し、税金は増やさない」と主張している孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表や朴智元(パク・チウォン)院内代表より、正直な一面がある。しかし、金持ちから、さらに税金を取り立て、庶民に分けて提供するという言葉も同様に、「無料福祉」の主張ほどに穴が多く、副作用が大きい。

所得税や法人税を引き上げれば、高所得者や企業は、自救策作りに乗り出すだろう。住宅や商店街を持っている余裕のある階層に対し、さらに税金を課すことになれば、賃貸料が上がり、テナントや自営業者の負担増加へと繋がることになる。企業各社の法人税が上がれば、その分だけ職員の給料や社内福祉は減ることになる。企業投資は萎縮され、雇用は減り、所得が増えない可能性が高い。金と企業は、わが国より税金の少ない国に流れることになるだろう。経済がこのような悪循環に陥れば、最も大きな被害は庶民に回ることになる。

フランスの「エルビス・プレスリー」と呼ばれるロック歌手のジョニー・アリデイは06年、「税金が過度に多く、フランスにはこれ以上住めない」として、富裕税のないスイスに移り住んだ。氏は、「自分も税金を納めることには同意するが、過度な税金には同意できない」と語った。「金持ち増税」の主張論者がモデルとしているフランスでは、アリデイのように、スイスに向け「脱出」した人だけでも10万人余りに上る。オーストリアやデンマーク、フィンランドは、自国資本の海外への流出を食い止め、国内消費を促すために、従来の富裕税を廃止した。「金持ち増税」は庶民寄りどころか、反庶民的結果へとつながる危険性が一段と大きい。