北朝鮮の延坪(ヨンピョン)島砲撃が起きるやいなや、米国は直ちに声明を出し、韓国政府の強力な対応に支持を送った。その米国が、韓国軍の延坪島K9自走砲射撃訓練に反対し、「状況管理」に入った。これは、韓半島の緊張が高まることで、北東アジア情勢に及ぼす影響を考慮した戦略的判断によるものとみえる。このような米国の政治的考慮は、国内世論の強力な対応圧力に直面した政府の行動半径を狭める「構造的制約」になっている。
●北朝鮮への非難は良いが、戦争はいけない
世宗(セジョン)問題研究所の李相賢(イ・サンヒョン)安保研究室長は、「延坪島砲撃で、北朝鮮が国際社会の非難を受けている状況は、米国にとって悪くない」と指摘した。昨年以降、対北朝鮮制裁の先頭に立ってきたオバマ大統領の政策に力を与えるうえ、中国を牽制しなければならない米国としては、北朝鮮の肩を持つ中国がともに非難されることも悪くないということだ。
しかし、米国は、今回の事態が、局地戦の様相に広がることは、北東アジア地域内の米国の戦略的利益に反すると見ているようだ。韓国の射撃訓練と北朝鮮の挑発、これに対抗した韓国の戦闘機砲撃が、北朝鮮の首都圏長射程砲の発射につながれば、軍事的介入が避けられない状況になる可能性もある。米国としては、イラクやアフガニスタンに続き、さらなる紛争地域に足を踏み入れる状況が起きないか、悩まざるを得ない。
このような理由で、米国は、李明博(イ・ミョンバク)政府の北朝鮮に対する圧迫政策を支持しながらも、これが南北間の武力紛争で飛び火することは遮断してきた。天安(チョンアン)艦沈没事件後、政府が5・24措置の核心である心理戦再開案を実践に移せないのも、北朝鮮が公表した通り、拡声器に射撃をして、局地戦に拡大することを憂慮した米国が反対したためだという。
●同盟国であり休戦体制管理者の米国
米国の延坪島射撃訓練の反対について、高麗(コリョ)大学の金聖翰(キム・ソンハン)教授は、韓半島で、米国のダブルスタンダードな役割を理由に挙げた。米国は、韓国の同盟国であるとともに、在韓米軍司令官が国連軍司令官を兼ねることで、休戦体制を維持する責任があるということだ。金教授は、「休戦協定の署名当事者である国連軍司令官の立場で、米国は、韓国の報復を止めなければならない立場でもある。同盟国としても、米国は、北東アジアの平和と安全の管理者の役割を果たさなければならないため、中国の変数や全面戦争拡大の可能性などを複合的に考慮せざるを得ない」と指摘した。
このため、米国は、外交的圧力による事態解決に重点を置いていると、徐載鎮(ソ・ジェジン)統一研究院長は見通した。徐院長は、「米国は、今回の問題を国連安全保障理事会に付託し、国際社会の名で北朝鮮に対する制裁を強化する外交による問題解決を進めるだろう」と話した。
しかし、政府関係者は、「延坪島射撃訓練は正当であり、これに対して北朝鮮の追加挑発が発生する場合、強力な自衛権行使は避けられず、米国もこれを尊重するだろう」と期待を示した。
●米国のために思うように報復できない韓国
伝統的に米国は、北朝鮮の挑発による自国民の被害には積極的に対応したが、韓国の被害に対する報復対応は阻止してきた。代表的な事例は、68年1月21日の北朝鮮軍の「大統領府奇襲事件」と2日後に発生した米国情報収集艦プエブロ号拉致事件に対するジョンソン政府の対応だ。
北朝鮮特攻隊の大統領府奇襲が起こった日に、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領は、ウィリアム・ポーター駐韓米国大使を呼んで、即刻報復措置を求めたが、米国はこれを断った。ジョンソン政府は、プエブロ号事件が起きた後は、自国民の安全のために、韓国の単独報復を抑制しながら、密かに乗組員の救出のための秘密協議に入った。朴大統領は、公式に抗議して自衛権を発動すると主張したが、結局、米国の1億ドル追加援助とM16小銃工場建設の約束で満足しなければならなかった。
83年10月9日、ミャンマーで、アウンサンテロ事件が発生すると、米国は、空母「カールビンソン」と付属戦闘団を韓半島海域に駐留させた。しかし、当時、リチャード・ウォーカー駐韓米国大使は、全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領に、「テロの背後が北朝鮮であると確信するが、報復攻撃には絶対反対する」と事前に線を引いた。
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