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北朝鮮の民主化運動に明りを灯した 「行動する亡命者」黄長鎏氏永眠

北朝鮮の民主化運動に明りを灯した 「行動する亡命者」黄長鎏氏永眠

Posted October. 11, 2010 04:02,   

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黄長鎏(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記が、北朝鮮で労働党創建65周年記念行事が開かれた10日に息を引き取ったことは、歴史のアイロニーだ。同日の行事で、北朝鮮は、3代世襲に対する国際社会の非難にもかかわらず、金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男・金正恩(キム・ジョンウン)氏を主席壇(ひな壇)に立たせ、正恩氏が公式の後継者であることを内外に中継で知らしめた。まさにこの日、亡命から13年間、北朝鮮の世襲独裁を強く批判してきた黄氏が永眠したのだ。

黄氏は97年2月12日、中国北京の韓国総領事部を通じて亡命した。北朝鮮は、黄氏の亡命の翌日、「想像できない不可能なことであり、敵によって拉致されたにちがいない」と主張したが、約3ヵ月後の4月20日、黄氏が記者会見で北朝鮮を批判すると、これを宣戦布告として、「黄逆賊を必ず黄泉の客にする」と言い放った。

にもかかわらず、黄氏は様々な公開活動を通じて、北朝鮮の世襲独裁と実情を批判した。黄氏は99年、日本の文芸春秋から出版した回顧録『金正日への宣戦布告・黄長鎏回顧録』で、金総書記の統治術や戦争観、北朝鮮の戦争準備の状況などを批判した。また、同年、韓国で『私は歴史の真理を見た』というタイトルの自叙伝を出版し、北朝鮮の主体思想が封建思想に変質した過程や、そのことについての自分の見解を表明した。その年、ドイツのニュース週刊誌「シュピーゲル」とのインタビューで、「金日成(キム・イルソン)親子は、ドイツ第3帝国(1934〜45)時代のヒットラーのように住民を完全に服属させた」と話すなど、亡命初期の黄氏の北朝鮮批判はよどみがなかった。

しかし、金大中(キム・デジュン)政府が太陽政策を通じて南北関係の改善に乗り出したことで、00年から「南北協力」に批判的な黄氏の公開活動の自由が制約され始めた。黄氏は、「当局が考えを話す機会を与えず、米国への訪問も遮っている」と主張した。

黄氏は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代の03年10月、国家情報院が、「米国への訪問に反対しない」として特別保護の対象から除外し、観光ビザで米国を訪れた。黄氏は、米国で講演やメディアのインタビューを通じて、「核兵器放棄の見返りに、金正日政権の独裁体制維持を保障することは、北朝鮮住民の人権を犠牲にして独裁者と駆け引きすることだ」、「中国が、北朝鮮に中国式改革政策に従うよう説得できるなら、武力の使用なく北朝鮮政権を交代させることができる」と主張した。

06年に再び米国を訪問しようとしたが、盧武鉉政府はパスポートを発給しなかった。04年8月には、ある海外の有名放送局の記者が取材の約束をして黄氏を訪ねたが、インタビュー場所に現れた情報要員の制止を受けたこともあったという。

08年に発足した李明博(イ・ミョンバク)政府は、黄氏に海外旅行や執筆、講演などの自由を配慮することを明らかにした。その後、黄氏は、大学生を対象に不定期に安全保障の講演を行い、対北朝鮮放送である自由北朝鮮放送の「民主主義講座」に定期的に出演するなど、公開の活動を再開した。昨年には、東亜(トンア)日報の記者に対して講演を行い、「民間非政府組織(NGO)や脱北者の北朝鮮民主化運動に余生を捧げる」と話した。

黄氏は、この時から、国内の約300の脱北者団体を自らが委員長を務める北朝鮮民主化委員会を中心に統合することを始めた。東亜日報での講演で、「非政府組織が立ち上がれば、(北朝鮮民主化の)コストが節約できるうえ、効果的で道徳的だ。米国が、パキスタンやイラク戦争などに1800万ドルを使ったというが、私に900万ドルをくれれば、北朝鮮の民主化を成功させる自信がある」と語った。

今年3、4月、米国と日本を訪問し、米ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で開かれた講演で、金正恩氏について「その程度の人のことを知って何の意味があるのか」と述べ、東京での非公開の講演では、「北朝鮮が短期間に崩壊する可能性はない」と発言した。

黄氏は、首領絶対主義思想に歪曲される前に自分が体系化した主体思想に愛着を示し、これを「人間中心哲学」と命名し、「民主主義政治哲学」(05年)、「弁証法的戦略戦術論」(06年)、「人間中心哲学原論」(08年)などの関連書籍を出した。

一方、黄氏は、一緒に脱北して亡命した金徳弘(キム・ドクホン)氏が02年に米国を訪れ、北朝鮮の状況について証言することを求めたが、これに反対したことで金氏との関係が疎遠になった。金氏は最近、公開の席上で、「黄氏はまだ主体思想に未練を持っているようだ」と非難した。



zeitung@donga.com