海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」事件を機に、大統領安保特別補佐官(長官級)が新設された。外交安保首席秘書官の仕事とどのような違いがあるのだろうか。一言で言って、安保特別補佐官のすべき仕事は、それほど多くなさそうだ。安保特別補佐官は、大統領府の公式の職制にない無報酬職だ。大統領府内に事務所もない。金徳龍(キム・ドクリョン)国民統合特別補佐官や孟亨奎(メン・ヒョンギュ)政務特別補佐官のように、大統領の要請に応じて助言する。案件は、南北間の軍事衝突事件に限定される。北方限界線や軍事境界線で衝突があれば話をする程度だ。大統領府で安保問題は、依然として外交安保首席室が担当する。
◆外交安保首席室傘下の危機状況センターは、危機管理センターに名前を替えることになった。過去では危機状況の情報伝達が主だったとすれば、これからは、危機予防を担うことになった。状況センターの時は国家情報院から派遣された幹部が率いたが、管理センターになって、准将階級の軍人が統率することになった。安保特別補佐官が同センターを管轄するというのは誤った報道だ。同センターは、依然として外交安保首席が管轄する。安保特別補佐官は、センター運営に関する諮問をするだけだ。
◆安全保障の両輪は、同盟を扱う外交と実戦に備える国防だ。天安艦事件は、韓国が国防の需要が多い国であることを知らしめた。職業軍人出身が大統領だった時代には、外交専門家を外交安保首席に任命することが合理的だった。その時代が終わったとすれば、バランスを取るか、逆に進まなければならない。金泳三(キム・ヨンサム)政権時代からこれまで、外交安保首席や類似の職務を務めた人は13人だが、このうち国防の専門家と言えるのは3人ほどだ。李明博(イ・ミョンバク)政府では、教授や外交官出身がこの地位を担った。
◆天安艦事件を機に新設された安保特別補佐官は、スポンサー検察事件が起きると、公職者不正捜査局を作るといった発想と非常に大変似ている。安保を強化するには、実権のない地位を設けるのではなく、名実共に安保専門家を外交安保首席に任命すべきである。日本に原爆を投下し、第2次世界大戦を終わらせ、韓国戦争の時にいち早く米軍派兵を決めた米国のトルーマン大統領は、机に「The buck stops here(すべての責任は私が負う)」という言葉を置いていた。大統領は、安保の責任を負った最高の地位だ。最高の安保を構築したいなら、大統領は実権ある地位に最高の安保専門家を置かなければならない。
李政勲(イ・ジョンフン)論説委員 hoon@donga.com