少し面食らった表情だった。自分でも信じられないという言葉を繰り返した。
「オリンピックの新記録も、クラマーの失格も全て、奇跡のようなことですね」
スピードスケートの李承勲(イ・スンフン、22、韓国体育大学)が、男子500メートルの銀メダル獲得に続き、24日に開かれた1万メートルでも金メダルを獲得した。
強力な金メダル候補だったスベン・クラマー(オランダ)が、レース中、コースを誤ったせいで失格となり、銀メダルに止まるはずだった李承勲が、金メダルを獲得した。クラマーは、李承勲より4.05秒早く、決勝ラインを通過したものの、どのメダルも獲得できなかった。
李承勲は競技後、「正直に言えば、漁夫の利で得た金メダルのような気がするが、気持ちはすごくいい。次回はクラマーときちんとレースを行い、必ず勝ちたい」という気持ちを明らかにした。銀メダルが金メダルに変わった瞬間、李承勲は、コーチングスタッフと抱き合って喜んだ。李選手は、「びびっとした快感を覚えた。結果に関係なく、自分にできることはすべて出し切った。2位だったが、金メダルに変わった瞬間、正気でなかった。花束のセレモニーの時、銀メダルと銅メダル選手が、私を持ち上げてくれた。非常に光栄だった。この選手らは、アジア選手初の金メダルを獲得した私を認めてくれたような気がした」と話した。
李承勲はすでに、クラマーが決勝戦の通過前に金メダルを予感した。「全く気づかなかったが、クラマーのレース中、監督から『クラマーがミスをしたようだ』と言われた」と明らかにした。
スピードスケートで長距離種目は、欧州選手らの占有物だった。しかし、李承勲は、アジア選手初の銀メダルに続き、金メダルまで手にした。その秘訣について李承勲は、「ヨーロッパ選手らは体が大きいが、その分だけ重く、体力の消耗が激しい。私は背は低いが軽く、少ない力でレースを走ることができる。体格は大した問題ではない」と話した。さらに、「欧州選手らは足が長く、追いつくのは容易でないので、私は体力的な負担は大きいが、姿勢を低く下げなければならない。体力をつけようと、持久力のトレーニングに集中した」と付け加えた。モ・テボムと李サンファ(2人とも21、韓国体育大学)の善戦振りも、彼には刺激となった。
李承勲は、「韓国のスピードスケート史上、これほど多くのメダルを獲得したことはない。選手らも皆、驚くほどだ。選手村でも、前の部屋はショートトラックの選手らが使っているが、会うたびにお祝いの言葉を掛けてくれ、頑張るようにお互いに励ましている」と語った。すでに自分のすべての競技を終えた李承勲は、五輪後にやりたいことも口にした。計画は素朴なものだった。
「ソウルの町を堂々と歩いてみたいですね。大勢の人々からサインをお願いされれば、楽しそうですね。ハハ」
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