最近、証券業界で、金ジュンイル・ロックアンドロック会長(58)の成功神話で持ち切りだ。
密閉容器分野で国内トップのロックアンドロックは先月28日、総合株式市場(コスピ)に上場し、1日現在、公募価格(1万5700ウォン)を上回る2万1450ウォンで取引を終えた。金会長が保有持分2726万株の相場は、5847億ウォンに跳ね上がった。1978年、生活用品の輸入商として事業を始めた金会長は、証券市場への上場で、6000億ウォンに迫る富豪リストに名を連ねた。
1日基準で、現代(ヒョンデ)自動車の鄭義宣(チョン・イソン)副会長の保有持分の相場は1兆2822億ウォンで、新世界(シンセゲ)グループの鄭溶鎭(チョン・ヨンジン)副会長は8333億ウォンだ。三星(サムスン)電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副社長は6529億ウォン、LGグループの具本茂(ク・ボンム)会長の息子の具光謨(ク・グァンモ)氏は5283億ウォンの株を保有している。裸一貫で起業した金会長が保有株の価値は、彼らと肩を並べられるほど跳ね上がったのだ。
しかし、金会長のコンピュータには、株価相場を確認できるホームトレーディングシステム(HTS)はない。上場後、初めての役員会議が開かれた先月31日、IR役員の金ソンテ経営支援本部常務を除いた全社員に対し、社内でのHTS使用禁止を指示した。株価に一喜一憂するより、製品開発に生き残りをかけていた初心を忘れないように、という意味だ。
金会長は、妻から「落ち着きがない」と言われている癖が一つある。会話中でも絶えず、手でロックアンドロック容器のふたを開閉するのだ。容器の密閉力を100%に引き上げるため、ふたと容器を繋ぐ、蝶番(ヒンジ=hinge)を2年以上も実験を行い、それが癖になった。
韓国放送通信大学・行政学部出身の金会長に、製品開発の秘訣を尋ねると、このような答えがかえってきた。「製品開発で最も大事なのは、執念と根気だ。小さい時、弁当から漏れたキムチの汁で教科書が濡れた経験から、消費者ニーズを読み取り、強い意志で諦めず、長い間悩んだのが秘訣といえば秘訣」。
しかし、野心に満ちた新製品に市場の反応は冷たかった。片手で押して閉じる密閉容器「タッパーウェア」や「ラバーメイド」など、海外製品が韓国家庭の冷蔵庫を先取りしていたからだ。氏は、海外展示会の進出に方向転換した。海外バイヤーらを相手に製品の優秀性について説明すること数回、06年6月、一人のカナダ人バイヤーから、世界最大手の通販チャンネルの米QVC放送で、製品を宣伝しようという提案を持ちかけられた。ロックアンドロックの中に紙幣を入れ、水槽の中に入れて取り出しても、全く濡れていないことを見せ、手元にあった5000セットが、瞬く間に売り切れた。国内に戻ってきた金会長は、当時、LGホームショッピングで、9回連続で売り切れという記録を樹立し、大手スーパーなどの流通ルートを確保した。現在、ロックアンドロックの国内密閉容器市場のシェアは、59.7%に上る。
03年、ロックアンドロックの1年間の売り上げは、1000億ウォンを超えた。金会長は04年、中国上海に法人設立後、中国市場への本格的な参入に乗り出した。当時、中国で大きなブームだった「宮廷女官チャングムの誓い」の梁美京(ヤン・ミギョン)氏を広告モデルに起用し、2年間、北京や上海などで50億ウォンの広告費を投入するほど、集中的なマーケティングを行った。
特に、北京五輪をきっかけに、「中国製」へ関心が増すだろうという予測が当たった。中国現地で生産した製品を、直接走り回りながら販売した結果、昨年、北京や上海の2ヵ所の営業法人だけでも、売上高が1000億ウォンを超えた。2位のメーカーとの売上高の差は、2倍以上に広がった。
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