4日、エジプトのカイロ大学の大講堂。朝から詰め掛けてきた900人あまりの国内外メディアの記者や学生らの間では、期待混じり緊張感が漂っていた。まもなく始まるバラク・オバマ米大統領の演説に盛り込まれるアラブ圏へのメッセージの意味合いや重みが格別だからである。
同日の演説は、オバマ大統領の就任後、始めての中東歴訪における最も重要なハイライトである。オバマ大統領はこの場で、同時多発テロ以降に悪化した米国とイスラム圏との関係を回復し、相互尊重や協力を模索するよう促す予定である。オバマ大統領の訴えが、米国を「敵」とみなしてきたイスラム圏との和解を導き出せるかどうか関心が集まっている。
●「我々は敵ではない」
オバマ大統領は、「我々は同じ希望や未来への夢を共有しており、その実現のための努力も一緒に進めることになるだろう」と強調するものと見られる。また、「米国は、皆さんとこれまでとは異なる関係を結ぶことを願っている」とし、「テロとの戦い」を堅持してきたブッシュ前大統領との違いを浮き彫りにする予定だ。「深まった不信の溝を埋めるため、米国から先に架け橋を作るつもりだ」という意志も明らかにする。
キューバのグアンタナモ収容所に収監されているアラブ人の人権問題や、イスラエルとアラブ権との和平交渉、米国によるアフガン戦争など、敏感の問題についての発言も、あえて辞さない構えだ。
同日の演説内容は、CNN放送などを通じて、全世界に生中継される。13の言語で翻訳された後、フェイス・ブックやグーグルなどのウェブサイトを通じても200カ国あまりにサービスされる。15億人に上るムスリム(イスラム教徒)らが、今回の演説をリアル・タイムでアクセスできるようにするためのホワイトハウスの特別措置である。
ホワイトハウスのロバート・ギブス報道官は、「一度の演説で全ての問題が解決されるわけではない」として、過度な期待感への警戒を示した。しかし、ロサンゼルス・タイムスなどの外国メディアによると、オバマ大統領は今後、米国の中東政策を念頭に置き、今回の演説には大いに気配りを見せたことが分かっている。ホワイトハウスの演説文の作成者であるベン・ローズ氏は、「大統領は先週中、演説文の素案を持ち歩きながら絶え間なく修正していた」と伝えた。
オバマ大統領は、今回の演説を今後の中東との関係改善のための決定的な契機にするという意志を持っている。ここには、かつて悪化してきた相互不信や偏見、憎悪の問題を先に克服すべきだという問題意識が横たわっている。3日、最初の歴訪先であるサウジアラビアでは、「イスラム文明の発祥地に直接出向くことが、非常に重要だと思った」とし、イスラムを学ぶ姿勢ができていることを強調した。
●歴史を変える名演説になるだろうか
歴代米大統領らの外国訪問演説は、「敵」とみなされていた国の国民に感動を与え、局面を転換させる外交的な力を発揮したことがある。その代表的なものが1963年、ジョン・F・ケネディ大統領のドイツ・ベルリンでの演説だ。
冷戦によって米国と東欧圏との関係が冷え切っていた時期、ケネディ大統領は、「共産主義と自由世界との間で持ち上がっている重要な話題が分からない人々がいれば、ベルリンにつれて来よう」と力説した。24年後の1987年、同地を訪れたロナルド・レーガン大統領は、ブランデンブルク門の前で、「ミスター(Mr.)ゴルバチョフ、自由化や平和、繁栄を望むなら、この扉を開けなさい。この壁を取り壊しなさい」と冷戦の終焉を促した。名演説と記録された彼の叫びの後、2年後にベルリンの壁は崩れた。
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