三星(サムスン)裏資金疑惑を捜査している特別検察官(特検)チームは17日、捜査結果を発表し、李健煕(イ・ゴンヒ)会長など関係者10人全員を在宅起訴した。
特検チームが、李会長など疑惑がもたれていた三星の主要役員たちの容疑を認めながらも、身柄拘束ではなく在宅起訴を決めたことについて、国民経済全般に与える影響とともに法の理念と企業活動の現実との間によこたわる乖離現象が反映されたものだ、との分析が多い。
実際、趙俊雄(チョ・ジュンウン)特検は、捜査結果の発表のなかで、今回の事件の性格について「財閥の企業経営や支配構造を維持管理する過程で、長期間にわたって黙認されていた不法行為を、現時点において厳格な法基準を適用させて刑事犯罪として処罰するものであり、その組織員の個人的な貪欲がもたらした典型的な背任、租税逃れの犯罪とは異なる側面がある」と述べた。
趙特検は、「こうしたケースの犯罪は、企業、とくに財閥企業の所有と経営を取り巻く現実的な環境と法的、制度的装置との間に横たわる乖離状況または不調和によって引き起こされているところがあるのも事実だ」と加えた。
李会長など、今回、問題になった三星の重役社員たちの行為が現行法に違反していることは間違いないようだ。ただ、今日までの財界を巡る風潮からして、三星側を一方的に非難するのも難しい側面がある。
実際、財界には「1987年に李健煕会長が三星グループ会長に就任した当時は、社会全般に大企業に対する否定的な見方が多かったうえ、とくに大株主の持分に対する規制が継続して強化されていた状況だった」との認識があり、「李会長が脆弱な持分構造のもとで、経営権保護や防御のために借名ででも持分を確保することが切実な状況であったという事情もあった」とする見方が少なくない。
三星側も、特検が起訴した租税逃れの容疑に関連して、「このような慣行は明らかに間違っている」と認めながらも、「今回問題になった部分は、基本的に経営権保護と防御にために持分を分散させる必要から始まった」と釈明した。
また、最初から脱税の意図があったというよりは、長期間にわたって借名で株を保有・運営する過程で、名義を貸した重役社員たちの死亡や退職で、街頭口座の株を処分する過程でやむを得ず譲渡差益が発生したというのが三星側の説明だ。
財界では、今回の事件を契機に「経営権問題」に対する企業側の現実的な苦慮を理解し、「便法的な経営権の継承」を強制した関連法令の見直しを求める声が強まっている。とくに、現在の相続税体系では企業の経営権の継承が事実上困難であるとして、制度の改善を促している。
これに関連して、孫京植(ソン・ギョンシク)大韓商工会議所会頭など主要経済団体の首脳たちは、「相続税を納めるためには相続を受けた株や不動産を売却しなければならない場合が多く、経営権の維持さえも脅かされている」として、相続税を資本利得税(譲渡所得税)に転換させることを求める声もある。
財界のある関係者は、「現行の法令を厳格に適用しようとすれば、相当数の企業家が刑事処罰を免れかねないのが現実だ。三星の不法行為を庇うつもりはないが、韓国経済のためにも企業がおかれている現実と法との乖離状況を埋めていく必要がある」と強調した。
全国経済人連合会のファン・インハク経済本部長は、「今回の三星の事件に関しては、司法的な判断を見守り、これ以上、過去の疑惑だけで企業活動の足を引っ張るようなことはなくなってほしい」と話した。
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