出版市場において、40代は穴場だ。「エイジング(aging)」関連書籍を出版する「ナムセンガク」のハン・スン代表は「雇用不安と老いの不安の危機に直面した40代が、本に答を探し求めている」と話す。『40歳の心理学』の著者、李ギョンス氏は、40代になると、どこかへ旅に出たいとか、しびれるような恋愛がしたいとか、ふと髪を伸ばしたくなるとか、ドラマを見て涙を流した、などと告白する。一生懸命生きてきたのに財布は空っぽ。衰えゆく体力にもかかわらず、ゴールにはまだまだ先。そんな憂鬱さをかかえる40代は、周囲にもたくさんいる。
◆英ウォーリック大学のアンドリュー・オズワルド教授が、80カ国約200万人を分析した結果、鬱病にかかりやすい年齢は平均44歳だという。おもしろいことに、先進国、途上国を問わず、既婚未婚、貧富、子供の有無とも関係なく、さらに職業や所得ともあまり関係がないという。ただ、女性のほうが何年か早いというぐらいのものだという。
◆その理由は、初めて「あきらめ」をおぼえるからだ、という。「望むことのすべてが実現するわけではない」という「限界」を自覚しつつ「いまや現実に順応しなければならない」という気持ちと「残り時間は少ないから中間決算で逆転しなければならない」というイライラが衝突するのだ。韓国の40代は、失業の不安の中で高齢を迎えなければならないだけに、第2、第3の人生に対するプレッシャーも大きい。オンライン教育サイト・エデュスパーの調査によれば「人生第2幕」のスタート年齢に、41歳が挙げられる。
◆平均寿命が延びるにつれ、ある程度金もなければという圧迫は大きい。金がなければ寿命の延長は夢でなく災い、という不安だ。老人問題専門家のコ・グァンエ(71)氏は、金も大事だが、人がいなければ金があっても意味がないのだから、腹を割って話せる「人」を作るべし、という。このように「上手に老いるノウハウ」もあふれているが、オズワルド教授は「歳月は薬」というシンプルかつ風変わりな主張をする。統計によれば、人間の幸福感は10代をピークとして下落し、40代に底を打ち、50代からまた上がるU字形だという。年をとるほどに「あきらめる」ものを増やすのが、幸福感の秘訣だという。要するに、それが「老いるほど幸せ」という意味なら、悪くない気もする。
許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com






