「人間の生命の価値は無限である」とは言われるが、これは生命の尊さを強調するための宣言的命題であるだけで、私たちはよく命がけの仕事をしている。高層ビルを建て、橋を架けることもその一つだ。事故や過失で死亡する作業員が出るものだ。補償金が支払われても、それは未来所得の損失に対する経済的補償に過ぎなく、命そのものの値打ちではない。経済学者たちは、生命のように非金銭的要素を金銭に換算する方法について、長い間悩んできた。
◆「時間が金」という言葉もあるが、実際、私たちはお金で他人の時間を売り買いする。外国のテーマパークの中には、並ばないで乗り物に先に乗れる優先利用券を販売しているところもある。この場合、「並ばない便益」の大きさは、「それのために当事者が支払う意思のある金額」であると経済学者たちはみている。生命にも似たような算法を適用することができる。危機的な瞬間には全てを投げて命を救おうとする人も大勢いるだろうが、平時に評価される本人の命の値打ちは「事故予防に使う容易がある費用×事故発生の確率」程度で計算できるだろう。
◆英紙ファイナンシャル・タイムズは、現代起亜(ヒョンデ・キア)自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)会長の不正に対する控訴審の結果について「10億ドル価値の自由」との見出しをつけた。鄭会長が、裏資金作りと系列会社株の変則相続などの行為に対して、8400億ウォンを社会に還元する条件で執行猶予判決を受けたことを皮肉ったものだ。裁判後、現代自動車に関係者たちの明るい表情と財界の歓迎声明からみて、彼の自由は10億ドル以上があるように見えるかもしれない。
◆しかし、米紙ウォールストリート・ジャーナルをはじめ海外の主要メディアは「ホワイトカラーの犯罪に寛大な韓国司法の風土が再確認された」と批判した。不法経営では世界化の厳しい波を飛び越えることは困難だ。そのことへの悩みのためか、裁判官も異例的に「実刑判決をするかどうかで、食堂の客やタクシー運転手たちにも意見を聞いてみた」と打ち明けた。鄭会長自身はもちろん、現代自動車や財界が今回の判決から「10億ドルの教訓」を得ることを望む。
虚承虎(ホ・スンホ)論説委員 tigera@donga.com






