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「近づけない岸壁に同僚の遺体が」死線を越えた最高峰登頂記

「近づけない岸壁に同僚の遺体が」死線を越えた最高峰登頂記

Posted June. 01, 2004 23:12,   

「申し訳ありません」。

韓国の女性としては初めて世界の最高峰であるエベレスト(8850m)を単独登頂した登山家のオ・ウンソンさん(38、ヨンウォン貿易、水原大学山岳会のOB)は顔を合わせるや否や、この言葉から切り出した。遭難事故で死亡したケミョン大学山岳部朴ムテク(パク・ムテク、36)の遺体を発見しながらも、そのままにして帰ってきたことが心残りだったからだ。

オさんは先月20日エベレスト北東稜ルートの中でもっとも困難とされる海抜8750mのセカンド・ステップに上がってすぐ、朴隊長の遺体を発見した。

「近づけない岸壁の上にロープに吊り下げられたまま死んでいる朴隊長を見た瞬間、涙をこぼしてしまいました。それでも、顔は安らかに見えました」。

オさんはこの事実をベースキャンプに知らせた後、続いて頂上に向けて登っていった。そのまま降りようかとも思ったが、それでも頂上に上がるのが登山家の道理だと信じていたからできた。

オさんが朴隊長一行の遭難ニュースを聞いたのは先月18日午後3時ごろ。当時最後のキャンプである海抜8300m地点のキャンプ5にいた彼女は、雪盲(雪から反射される太陽の光で角膜や結膜に炎症が起きて眼が見えなくなる現象)のためにキャンプまで降りていけないという朴隊長の無線連絡を受けた。

2次攻撃組としてキャンプに一緒にいたペク・ジュンホ(37)さんが頂上挑戦をあきらめて、朴隊長を救助しにいくと名乗り出た。オさんは2次事故が起きることを恐れてやめさせたがったが、そうできない状況だったため、自分の酸素ボンベなど装備をペクさんに渡した。

2日間キャンプ5で待機していたオさんは20日一人で頂上に向かった。厳しい寒さに酸素が希薄なところで2日間もすごしたためにすでに体は疲れ切っていた。1個あたり10kgもある酸素ボンベを2つも背負って登ったオさんはとうとう一つ捨てざるを得なかった。「後はどうであれ、あまりにも重くてどうしようもなかった」という。

出発11時間ぶりに頂上に上った。10分間頂上にとどまってから降りてきたが、30分足らずで酸素がなくなった。気が遠くなりかけた状態のまま、普通なら3、5時間かかるキャンプ5まで11時間もかけて降りてきた。遠くにキャンプ5の明かりが見えるころには憔悴したあまり座り込んでしまったが、幸い他国の遠征隊のシェルパーの目に付いて、テントに入ることができた。彼女を待っていたシェルパーは気象悪化を理由に山を降りていた。

今回のエベレスト登頂でオさんは世界の七大陸の最高峰の中で4番目の頂上に上った。残された峰はアフリカ最高峰のキリマンジャロ(5963m)、オセアニアのカステンツ(4884m)、南極のビンソンマッシーフ(4897m)。オさんは今年8月にキリマンジャロに挑戦し、残りの2つの峰は来年遠征する予定。

「数日前、北漢山仁寿峰(ブクハンサン・インスボン)でも事故で人が死んでいます。人生とはそんなもののようです。それでも厳しい状況であればあるほど勇気を出さなければ」

死の崖っぷちまで行ってきたオさんは山で人生がなんたるかを悟ったようだ。



田昶 jeon@donga.com