外国人がフランスのルーブル博物館と英国の大英博物館を観覧した後の共通した感想は何か。まず普通は驚く。お金に換算できないほどの宝物が数多く展示されているのだから、驚くのは当然だろう。だが、珍奇な展示品を見ているうちに、驚きはいつのまにかフランスや英国に対する怒りへと変わる。展示室ごとに他国の文化遺産がずらりと並んでいるからだ。さらに、購入、寄贈などの正当な手続きを経て得たものよりも、他国から奪ってきたと思われる展示品がもっと多い。だから、観覧を終えた外国人は心の中で次のように叫ぶ。「泥棒め!」
◆領土拡張と富の略奪を狙った戦争の時代は過ぎ去ったが、フランスと英国は依然としてエジプトやギリシャなどからの文化遺産の返還を求める要求を黙殺している。さらに詭弁までもが動員される。ルーブルにある「サモトラケのニケ(勝利の女神)」がその代表的な例。この作品は、1863年、ギリシャのエーゲ海にある小島サモトラケで、フランス人によって発見された。この像は壊れた状態のままフランスに搬入され、複雑な復元作業によって頭部を除いて全部が今にも動きそうな姿を取り戻した。フランス人は、この傑作を発掘して復元しなかったら道端の石ころのように扱われ消え去っただろうと言い、フランスが文化遺産の保護に大きく貢献していると強く主張している。
◆バンダリズムと呼ばれる文化遺産の破壊行為と略奪は、普通外国を相手に行われる。だが、イラク人が自国の文化財を略奪し破壊する奇怪な現象が起き、世界の人々を驚かせている。バグダッド市内にある国立博物館だけでも、数万点の遺物が略奪されたという。戦争の渦中で食べ物のために、また24年間の虐政によって苦痛を強いられたことに対する不満から、市役所を襲撃することはあり得ても、およそ7000年前の祖先の息づかいのする遺物までも破壊するイラク人の行動は理解し難い。イラク人は英国とフランスにメソポタミアの文化遺産を返してほしいと要求することも困難になった。
◆イラクの前は、アフガニスタンのタリバン軍事政権が自国の文化遺産を破壊して、大きなしっぺ返しをくらった。タリバン政権が01年3月に高さ52.5mと34.5mの世界最大の石造仏像を壊すと、世界の世論が一斉に背を向けた。米国の攻撃の前にタリバン政権が自ら不幸の種をまいたわけだ。世界の人々がタリバン政権の仏像破壊に怒りを感じたのは、いわゆる「文化遺産は人類共通の財産」という信念のためだ。人間の寿命は長くて100年足らずだというのに、悠久の歴史と人類に対してあまりにも大きな罪を犯しているようで心が痛む。
方炯南(バン・フェナム)論説委員 hnbhang@donga.com






