Go to contents

[オピニオン]息子を呼ぶ祭壇

Posted May. 07, 2002 09:33,   

陸軍刑務所に収監中の「死刑囚金大中(キム・デジュン)」は、80年12月、当時高校生だった三男の弘傑(ホンゴル)氏に宛てた手紙(獄中書信)の中で、父親としてやってはいけないことを犯したことについて、罪責感を吐露している。思春期に起きた父の収監生活と軟禁、そして逮捕と死刑宣告の過程を見てきた末っ子に対する、やるせない父としての親心が獄中書信の随所ににじみ出ている。夫人の李姫鎬女史も、妻を亡くした金大統領との晩婚で40過ぎに授かった我が子への愛情は人並み以上のもので、弘傑氏のことは大小を問わず、直接関与していたという。

前任の大統領が、息子の賢哲(ヒョンチョル)氏によって大きな渦中に巻き込まれるのを見ていながら、情報機関が警戒の対象として挙げていた人物と交流する弘傑氏を放って置いたことは、理解し難い。自らを補佐する情報機関の報告より「幼い頃から正直な良心の持ち主だった」(獄中書信)末っ子の釈明の方を信頼していたからなのであろうか。

5年を周期にして、大統領の息子の不正疑惑で国中が騒然とする国際的な恥さらしの年を迎えている。韓国の大統領は、任期明けが近づくと、息子の弁護士を手配しなければならない。経済協力開発機構(OECD)加盟国でありながら、大統領の息子の問題においては、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも最下位レベルだ。

権力の中枢が、政権初期から崔圭善(チェ・ギュソン)被告を危険人物ととらえて、集中的に監視していた形跡が明るみになりつつある。大統領の親戚姻戚がからんだ不正の監視業務を担当していたサジク洞チーム(警察庁調査課)が崔被告に密着してけん制していたが、高級服ロビー疑惑のあおりで解散したすきを狙って崔被告が弘傑氏を巻き込んだ、との話が持ち上がっている。

「子どもに弱い母親の親心」から原因を見出そうとする分析もある。情報機関が、崔圭善コネクションをまとめて大統領府(青瓦台)に報告した後、父親から叱責を受けた弘傑氏が母親に「息子の言葉を信じるのか、それとも我が家を監視し弾圧していた人たちの話を信じるのか」と訴えたとの話も聞こえてくる。

金大統領夫妻としては、弘傑氏のプライバシーを根掘り葉掘りと暴き出すマスコミがうらめしく思われるかも知れないが、大統領の息子は、最たる公人である。大統領の息子がいくらぐらいの家に住んでいて、ファーストクラスの航空運賃はどういうカネで支払ったのか、また米国にはどういう資格で滞在しており、どんなことをしているのかをせんさくするのは、マスコミの当たり前の役目である。

大統領の息子の生活にも、監視されるべき公的な側面と、保護されるべき私的な側面があるとは言え、公私が線を引くように明確に区分づけられるわけではない。公的な過ちの根源を突き詰めていくうちに、やむなく私的な部分についてもスポットライトが当たるのも避けられない。

若人として、学問に志を立てた以上、世相のさ細な楽しみとは絶縁して、目標に向かってまい進しなければならない。退屈な勉強に性が合わなければ、就職するか事業を営めばいい。米国で修士や博士号を取ったからといって、必ず立派な人になれるわけでもない。米国に行くと、金持ちの親に恵まれて、留学生として米国に行って大学に籍を置いただけで、ゴルフ場に入り浸って遊んで暮らす人が少なくない。

弘傑氏は、米国と韓国を行き来しながら11年(1982〜93年)かけて大学を卒業し、南カリフォルニア大学(USC)で7年(1994〜2000年)かけて修士号を取得している。その後、USCの研究員を勤めている。18年間「大学生」を職業としており、研究員としての2年間もその延長線上にある。

長男と次男は長いこと職を持たない生活を送ってきたが、野党が厳しく弾圧されていたころ、国内で父を助けていた。弘傑氏は年が若いので世相のことに疎く、悪賢い人の誘惑に陥ってしまったとする話は説得力に欠けている。数え年で、今年40歳になる。

子どもが成人すると、親の意のままにならないのが世の中の理である。ゴルフボールと息子は意のままにはならなかった、という名言を残した企業家もいるが、このような理解は、あくまでも私的な領域に限られるものである。これまでに明らかになったことからも、金大統領は息子に対する公的管理を疎かにした責任を免れ難い。

来る大統領選挙でも、大統領候補の子どもたちをめぐって、猛烈な攻防が予想される。李會昌(イ・フェチャン)候補は、息子たちの兵役問題で前回の大統領選でダメージを受けた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補は、子どもたちが本格的な社会生活を始めたばかりの時期とあって有利な側面もあろうが、大統領になってからのことは断言できない。両候補は、子どもたちを透明なガラスの中で暮らすように仕向ける覚悟を決めるほかにない。

「苦悩の日々」を送っている金大統領夫妻の心境も察しがつくものの、苦労の末に発表した声明からは、息子がかかわった不正に対する厳しい意志が見受けられない。旧約聖書の創世記には、アブラハムが天の呼びかけに応えて、息子のイサクを祭壇に捧げるくだりがある。「天の呼びかけ」を、現代の言葉で解くと、すなわち民心となる。

黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員