
夜明け、一番鳥の大きな鳴き声に目を覚ます。この泣き声を最後に聞いたのはいつなんだろう。久しぶりにわらぶき家の暖かいオンドルの上で洗いたての布団にもぐり込み、満月に向かってほえまくる犬のほえ声に眠りを誘いながら眠り込んだ。
全羅南道順天市郊外にある楽安邑城(ナガンウプソン)の民俗村での朝。 ねじられたドア−をやっと足で押し開けて外を眺める。澄み切った空、きれいに掃かれた庭が目に入る。敷居を越え出てみると縁側に何かが見える。洋銀のお盆に盛られたやかんとコップ。夕べ、宿屋の女将さん(ファン・ジョンエ、68)が置いてくれたのだろう。きめ細かな心遣いに田舎のおばあさんのような暖かさが感じられる。
縁側に腰を据え周辺を見渡す。 低い垣根越しに数百年の年を経た巨大な銀杏の木が低い垣根越しに見える。垣根の下、広い花壇は言葉通り、花の宮殿を成している。紫色の木蓮、ピンク色の八重椿が咲き誇り、地面は落花が散らばっている。過ぎ去る春が名残惜しいかのように、つつじ、クチナシ、金襴の花、紅桃の花、ハスの花、アスパラ、アジサイが満開になっている。
百年の歴史を持つ古い家。高級ホテルにも劣らない清潔さ。それに水洗式のトイレまで備えている。都市からきた旅行者も不便は感じないだろう。
楽安邑城の日の出は遅い。楽安を囲んでいる高い山のためだ。観光客の少ない夜明けこそ楽安邑城を見物するには絶好の時間。城壁に登り、村を見渡しながら散歩を始める。わらぶき屋根の柔らかい曲線、高くも低くもない土の垣根を沿って続いている小道、威風堂々の昔の官庁と宿屋、その横に連なっている古木、旅籠に付けられた白い綿のひさし。この世の中に、こんなに平穏で美しい朝を迎えられるところはこのほかにはないだろう。
暦の上では穀雨(3月20日)、清明過ぎて穀雨、穀雨過ぎて立夏(5月6日)が訪れるので、穀雨は春の終わり、夏の始まりなのでは。楽安邑城を出て、筏橋(ボルギョ)を経て宝城(ボソン)に向かった。穀雨を迎え新芽の摘み取りを始めた茶畑を見るためだ。このごろの茶畑は1年の内で一番美しい。淡緑の若葉の色がさわやかで、新芽を摘み取るおばさんたちの白い頭巾が緑の茶畑をより美しくするためだ。
この香ばしい新茶を味わうため訪れる宝城の茶畑。杉の林に取り巻いている大韓茶業の宝城茶園は朝早い時間にもかかわらず観光客が少なくない。修道所と比丘尼が登場する宝城茶園を舞台にした、あるモバイル通信会社のテレビコマーシャルによって有名になったためでもあるが、お茶を楽しむ人が増えたためでもある。
どこを見渡しても杉、茶の木である茶畑で迎える朝は、とてもさわやかだ。高い山の向こうから朝日が頭をもたげると、茶畑に立ちこもっていた朝もやはあっという間に消え去る。その代わりに杉林を通るなだらかな道に濃い影が差す。
茶畑に向かう道。杉と茶の木とが私を迎えてくれる。杉林の日陰、茶畑の小道を歩いていると、心身が緑に染められ、そっと触ると緑の水が落ちてきそうだ。なんとさわやかな感じ。
茶畑から始まったこの旅。今度は近くの宝城湾の栗浦(ユルポ)海岸の海水緑茶湯に足を運んだ。3階(男性用、2階は女性用)のガラス越しに眺められる海。引き潮の朝には、忙しく行き来するかにが姿を現す干潟が、満ち潮の夕方には船が連なっている海が楽しめる。
お湯は地下120メートルの岩盤から引き上げた海水成分の地下水。この地下水に茶の葉を入れた茶色の緑茶の湯船と地下水だけの湯船がある。目で、口で楽しめたお茶の緑。今回は、お茶を入れた海水湯に身を浸かり体中で楽しめる。肌がつやつやになり、緑茶の成分が体に吸収されるのを感じる。
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