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[オピニオン]予備選挙制は拙速ではいけない

[オピニオン]予備選挙制は拙速ではいけない

Posted December. 08, 2001 12:24,   

米国東部のニューイングランド地方にある人口110万人のニューハンプシャー州は、4年に1度、2月になると政治家の「市場」と化す。最初の大統領予備選挙が実施されるため、序盤から優位に立とうとする大統領候補者らが殺到する。静かで美しい街が、大統領選挙の発火地点となるのだ。

人口が少ないため、大統領候補者らの演説会は、韓国の面(ミョン)レベルの遊説を連想させる。有権者よりむしろ報道陣が多いと思われるほどの大騒ぎとなる。大統領の座に就こうという一心で、事務所のひとつもなく身一つで飛び込む候補者もだいたい60〜70人になる。

大統領志望者が、このように初の予備選挙が実施されるニューハンプシャー州に殺到する理由は、「いい点数」さえ取れば、マスコミの集中報道によって全国的な名士になれるからだ。そうなれば、ばく大な資金と支持者がついてくる。全国的な知名度が低かった民主党のカーター(76年)、共和党のレーガン(80年)、民主党のクリントン候補(92年)は、皆、ニューハンプシャー州の予備選挙を足場に、ホワイトハウス入城に成功した人々だ。

米国の予備選挙は、政党の幹部や派閥の代表が「密室」に集まって候補を決めることに反対する党員の反発によって生まれた制度だ。初めて予備選挙を実施したのは、1904年フロリダ州で、ニューハンプシャー州は1952年からである。しかし、予備選挙制が全国的に定着したのは、民主党が画期的な拡大策をとった1968年以降のことだ。思ったよりはかなり紆余曲折を経たのである。

最近では、この制度の短所も大いに指摘されている。大半の州が、候補選択の主導権を握るために、徐々に選挙日を繰り上げる傾向が現れている。「スーパー火曜日」選挙がまさにそれだ。昨年の3月7日に実施された「スーパー火曜日」選挙には、南部と東北部の11の州が参加した。このように、各党の大統領候補者らの形勢が序盤に明らかになるため、7、8月の全党大会までの約6ヵ月間で国民の多様な検証を受けるようにするという当初の予備選挙の目的も希薄なものとなっている。

また、大統領候補が、普遍的かつ一般的な有権者によってではなく、特定勢力や階層によって選出されるという指摘も受けている。たいてい中心的な党員や、理念的に劣った人が予備選挙に参加するためだ。党員や一般の有権者らが、候補選出過程に広範囲に参加できるという点、有能な新人政治家を登場させられるという点では、大いに評価を受けているが、依然として補完が必要な制度である。

金大中(キム・デジュン)大統領が、総裁職から退いた民主党も、国民参加の「競選制」という予備選挙制を導入する模様だ。ワンマン体制、密室政治、体育館選挙など、あらゆる旧態を思えば、予備選挙制は国民に望ましい代案になり得る。しかし、現実を考えなければならない。狭い国で何ヵ月も予備選挙を実施すると、地域間の対立や金銭選挙そして操作選挙などの後遺症が少なくないだろう。党の代議員が出席する行事でも、収拾がつかなくなる場合が多々あるにもかかわらず、一般の有権者まで参加する大統領候補者の遊説が全国にわたって順に続けられれば、政界の雰囲気がどうなるだろうか。選挙のたびに目茶苦茶だ、とあちこちで言われるかもしれない。

そのうえ、民主党側の意図も、国民の目には純粋には映らない、政治の百年の計よりは、ひとまず試みる窮余の一策で進めるという印象が強い。目先の利益にしか関心がない大統領候補者が、拙速に拵えて穴があちこち空いたような競選規則を紳士的に守ろうとするだろうか。

米国式予備選挙で、有権者が直接大統領選挙候補を選ぶと言えば、見た目には本当にもっともらしい格好となる。差し当り政界に背を向けている有権者達の関心を引けるかもしれない。しかし、政治文化が韓国よりもかなり進んでいる米国も、予備選挙制を根づかせるのに約60年もかかったのだ。そのような制度を数ヵ月で作って実施するというなら、その不作用と後遺症に対しては、誰が責任を取るのだろうか。

民主党は、もう少し真剣な姿勢で、政治発展に向けた予備選挙を考えなければならない。単に、来年の大統領選挙だけを意識して、拙速に作った予備選挙カードを切るならば、それは国民を惑わすことにしかならないのだ。

南賛淳(ナム・チャンスン)論説委員



chansoon@donga.com