先日、科学技術部傘下の生命倫理諮問委員会で生命倫理基本法の試案が発表されて以来、激しい論争が繰り広げられている。生命工学を専攻とする科学技術者たちは規制が厳し過ぎると反発し、同試案がそのまま適用される場合、韓国での生命科学部門における研究が萎縮し、21世紀の生命工学時代に向けた国家競争力の低下につながると警告している。一方、宗教家や倫理学者らは国の競争力よりは生命の尊厳がはるかに重要であるとし、規制をさらに強化すべきだと主張している。
△今回のように科学技術の一分野が多くの人の関心を集めたケースも多くはないだろう。いまも韓国では科学技術を経済発展の道具と認識し、一般人とはあまり関係のない専門家の領域とみなす傾向が強い。しかし、いまや科学と技術は我々の日常生活に深く入り込んでいて、「他人事」ではなくなっている。クローニング、遺伝子組換え食品、環境汚染、情報社会のプライバシー保護など、個人の生活と価値観に直接影響を与える多くの問題がすでに表面化している。
△これらの問題の根本は、個人の価値基準に関わるものであるため、科学的な答えよりは国民的なコンセンサスを得ることが大切である。こうした意味で今回の生命倫理基本法をめぐる論争は、今後起こりうる同様の問題を解決する上での試金石にもなる。要するに、自分のことだけを主張するのではなく、相手の立場を理解しようとする努力を通じて双方が納得のいく社会的な合意点を見出す学習の過程になる。これが成功するには、科学技術者たちは倫理と哲学に対する普遍的な良識を備え、人文社会科学者たちは自然科学に対する理解を深めなければならない。
△しかし、必ずしも前途が平たんなわけではない。世の中が次第に専門化していくにつれ、自分の専攻以外の分野に関心を示さない専門家が増えており、大学教育でも一般教養よりは専門知識に重点を置く教育に偏りつつある。実際、大学と基礎学問の本当の危機はここにある。科学と倫理を兼ね備えた知識人ではなく、生命の尊厳を無視する科学技術者や世の中の変化の波を読み取れない法律家を送り出す「高級技能者養成所」に止まってしまう恐れがある。
オ・セジョン客員論説委員(ソウル大学物理学部教授)sjoh@plaza.snu.ac.kr






