スポーツ社会学という学問がある。言葉どおり多様なスポーツ現象を社会学的に分析して処方箋を下す分野だ。それによると、不世出の「バスケットボール皇帝」マイケル・ジョーダンは米国社会で黒人の地位を落としたありがたくない存在になる。黒人青少年たちにとって身分上昇の象徴のような存在であるジョーダンがどうして?、黒人の子供達がそれぞれジョーダンを自分の「役割モデル」にするせいで街頭バスケットボールに執着するようになり、いざ弁護士や医者など上流社会に進出するための勉強はなおざりにするようになったという論理だ。そう見れば独裁社会で愚民化政策の一つに活用されたスポーツが、これからは資本主義の不平等構造を固着させる機能をするわけだ。
◆米国で高校生のバスケットボール選手が大学に進学する割合は3500人のうち1人だという。大学のバスケットボール選手がプロバスケットボールに進出する確率も似ている。ジョーダンのようなスポーツスターになるのは空の星取りよりもっと難しいという話だ。それでも米国は韓国に比べればましな方だ。私たちの学校体育は大学に入るための手段に転落してから久しいが、米国は運動特技者でも学業に例外がないからだ。米大学の運動選手たちは学校の科目で平均B単位以上を取ることができなければ次の学期の試合に出場することができない。当然運動選手としての「寿命」が終わった後でも社会に出て他の仕事をする競争力がある。
◆韓国の事情は正反対だ。現在、小・中・高校の運動選手として活躍する生徒はおよそ12万人。彼(女)らにとって学校は運動をする所であって「授業」という言葉はない。苦労の末に大学に入っても状況は同じだ。選手が運動だけに専念できるように大学当局が単位と出席に厳しい教授とのトラブルを調整する役割を果たすほどだ。そうして大学を出ればどうなるのか。 運動の他には何も知らない人が社会に出て仕事を捜すのはスポーツスターとして成功するぐらい難しいことに決まっている。
◆こんなに歪曲された後進的な学校体育システムのため、ついに生徒が死に至ることもある。高校レスリング選手が無理やりに体重を減量して死亡した。3月忠鋻南道天安市(チュンチョンナムド・チョンアンシ)の某小学校サッカー部の合宿所で起きた火災惨事に続き、今年に入ってすでに二回目の事故だ。それなのに教育人的資源部(教育部)と文化観光部は学校の体育業務を押し付けるのに汲々としている。改革は大したことではないはずだ。子供達に対する誤った制度と慣行を見直すのが改革だろう。中央(チュンアン)大学のアン・ミンソク教授は「学生を運動の奴隷にしないためには最小限の学習能力を身につけさせるような制度改善が第一の課題だ」と強調した。
宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員 songmh@donga.com