倫理的に批判され、法で禁止されている売春行為をする風俗関連の女性だとしても、売春行為の取り締まりをする警察や区役所の公務員が、勝手に彼女らの人権をじゅうりんすることはできない。こうした人よりも、さらに恥知らずな犯罪者だとしても、法にしたがって陳情や訴訟をすることができるし、弁護士を選任して自分の権利を守る権利がある。
ソウル市千戸洞テキサス村の風俗関連の女性たちが、警察の人権弾圧とセクハラを中止してほしいと、国家人権委員会に陳情を出すと、警察官が来て、「陳情をしたリーダーはだれか」と脅し暴言を働いたという。警察は風俗関連女性や業者の不法行為を取り締まることはできるが、国家機関に対して陳情を出したリーダーを探し出して、処断する権限はない。
警察は、陳情の背後に売春の取り締まりを無力化させようとする売春業者がいるとみているようだ。背後にだれかいたとしても、警察は法にのっとって取り締まりをする、それだけのことである。売春行為をした女性は、適法な手続きにしたがって、捜査と裁判を経て、1年以下の懲役、または300万ウォン以下の罰金や拘留に処せられ、保護施設に送られることもある。売春行為をさせた業者に対する罰則はさらに重い。
売春取り締まりの根拠となる淪落行為などの防止法は、第3条に、「同法を解釈適用する場合、国民の権利が不当に侵害されることがないようにしなければならない」と規定している。この条文に出てくる「国民」とは、まさに風俗関連従事者を意味する。
警察は、悪徳業者の監禁や暴行、搾取行為から、風俗関連女性を保護する責任があるにもかかわらず、時々、奴隷売春を黙認し、ほう助したというしゅう聞が後を断たない。地方都市で、鉄格子がはめられた部屋に監禁されて、奴隷売春行為をさせられ、火災で彼女たちの遺体が発見された事件では、警察が定期的に風俗業者から上納を受けていたことが明るみに出ている。今回の風俗女性人権侵害事件も、普段の一線の警察が彼女らの人権を軽視する態度から始まった。
米国務省は、昨年7月に議会に提出した人身売買報告書で、人身売買退治に向けて納得できるだけの努力を傾けなかったとして、韓国を3等級に分類した。風俗女性の人権に対する警察と社会一般の認識が改善されなければ、人身売買と奴隷売春はなくならず、3等級国家から免れることはできない。
陳情書のとおり、風俗女性に対して警察が捜査中に、犯罪捜査とは関係なしにヌード写真を撮り、人格を冒とくするセクハラをしたとすれば、公権力による人権侵害であり、国家暴力だ。国家人権委員会は、まだ事務処理システムがまとまらず、調査ができないでいるというが、重要な国家機構を設置しておきながら、頭だけあって手足がない状態をいつまで放置しようとしているのだろうか。