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与党の無責任と野党のごり押しが招いた初の長官弾劾

与党の無責任と野党のごり押しが招いた初の長官弾劾

Posted February. 09, 2023 08:50,   

Updated February. 09, 2023 08:50

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「共に民主党」と正義党、基本所得党の野党3党が発議した李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官の弾劾案が8日、可決された。総投票数293票のうち賛成179票、反対109票、無効5票だった。弾劾理由は、災害安全主務長官として梨泰院(イテウォン)雑踏事故に適切に対処できなかったということだ。長官に対する弾劾案が可決されたのは75年の憲政史上初めて。弾劾案が可決された直後、李氏の職務は停止された。行政安全部は、憲法裁判所の審判結果が出るまで次官職務代行体制に入った。

初の長官弾劾事態については残念と言わざるを得ない。与野党はこれまで事故の真相究明と再発防止対策を設けるために国政調査まで実施したが、政治的攻防だけを繰り広げた。収拾の方向性をめぐって与野党の議論は終始平行線だった。李氏の去就をめぐって神経戦が続き、長官弾劾という汚点を憲政史に残すこととなった。

行政安全部長官は、悲劇的な事件が発生すると、法的責任を越えて民心収拾の次元で政務的責任を負わなければならない立場だ。李氏は、「警察と消防の人員配置不足が原因かどうか疑問」「格好よく辞表」など不適切な発言で物議を醸した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、「苦労した」とむしろ李氏をかばい、野党の長官解任建議を一蹴した。与党の強攻姿勢に野党3党が李氏の弾劾で対抗した形だ。

しかし、長官の弾劾は、政治的責任ではなく法的責任を問う手続きだ。長官が職務を執行し、憲法や法律に違反した行為が重大な場合にのみ弾劾が可能だ。このため、野党3党が弾劾訴追案に憲法第34条第6項(国家の災害予防義務)違反などを明記したが、憲法や法律違反と見ることは難しいという指摘が多い。李氏の相次ぐ無責任な言動が不適切だからといって、弾劾手続きを取るほどの重大な違法行為といえるかは疑問だ。

李氏の違憲・違法事実を立証する検察役の訴追委員は、国会法制司法委員長が担当しなければならないが、金度邑(キム・ドウプ)法司委員長は弾劾に反対してきた与党「国民の力」所属だ。金氏が野党3党が要求する訴追委員の役割を適切に遂行することは難しいだろう。

梨泰院雑踏惨事が発生して100日が経過したが、惨事の余震は続いている。犠牲者を追悼する場所をめぐり、遺族とソウル市は対立している。このような状況で、与野党が長官弾劾で衝突すること自体もどかしいことだ。憲法裁判所は長官の不在による混乱を最小限に抑えるためにも、弾劾審判の決定を急がなければならない。