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脱北後に再び北朝鮮へ…地獄へ戻った青年

Posted July. 04, 2026 08:35,   

Updated July. 04, 2026 08:35


「川岸をゆっくりと下りていった。周囲は少しずつ暗くなっていた。北朝鮮兵2人が肩にAK47自動小銃を無造作に担ぎ、市内へ向かって堤防沿いを歩いていく姿をあらかじめ目で確認した」

鴨緑江(アプロクカン)を渡る場面といえば、多くの人は脱北して中国へ向かう瞬間を思い浮かべるだろう。しかし、本書の著者が向かった先は中国ではなく北朝鮮だった。一度脱北して韓国に定着した著者は、北朝鮮に残した母親を連れ出すため、再び鴨緑江を渡った。

チャンネルAの番組「今会いに行きます」で知られる脱北青年のエッセーだ。脱北、再入北、そして再脱北までの過程を描いた本書は、推理小説のような緊迫感をもって読み進められる。劇的な脱北の過程は細部まで生々しく描写されており、再入北時にスマートフォンで撮影したという両江道恵山市(ヤンガンド・へサンシ)の風景写真も臨場感を高めている。文章にやや粗削りな部分はあるものの、その率直さがかえって切迫感を際立たせている。

北朝鮮で平凡な労働者の息子として生まれた著者は、常に学年トップの成績を維持する秀才だったという。しかし、父親が政治犯の嫌疑をかけられて命を落とした後、北朝鮮社会の最下層へ突き落とされた。生き延びるため、2016年に鴨緑江を渡り、中国を経て韓国へたどり着いた。韓国では宣教師の支援でニュージーランド留学を果たし、スマートフォン販売の仕事で安定した収入を得るなど、夢のような生活も経験した。

しかし心の片隅には、北朝鮮に残してきた母親の存在が常にあった。結局、19年に再び中国へ向かった。仲介人を通じて母親を脱北させるためだった。鴨緑江沿いの中国側の町で待ち続けたが、母親は「危険ではないか」と決断できずにいた。仲介人まで諦めると、著者は自ら川を渡って母親を連れ出すことを決意する。「親を助けるために命懸けで再び北朝鮮へ入る子どもがどこにいるのか」という周囲の制止も振り切った。

だが、川を渡った直後から危険が待ち受けていた。巡回中の北朝鮮兵と鉢合わせ、激しいもみ合いの末、辛うじて逃げ切った。著者が北朝鮮へ戻ってきたという噂が故郷に広がり、家族への監視も強化された。結局、22日間にわたり山の斜面や鉄条網を越えて逃避行を続けた末、母親を連れ出せないまま、一人で再脱北した。

韓国へ戻った後も、待っていた現実は厳しかった。無断で北朝鮮へ入国したとして、国家保安法違反の罪で執行猶予付き判決を受けた。その後は特殊詐欺事件にも巻き込まれ、実刑判決を受けて服役した。しかし、10カ月の刑務所生活を終えて20年9月12日に出所すると、冷たい刑務所の正門前で彼を待っていたのは、その間に脱北に成功した母親だった。両腕を広げて抱きしめる母親のぬくもりを感じながら、著者は「自分を抱きしめてくれるこの温かい腕こそ、本当の自由だ」と語る。

本書の魅力は、劇的な出来事そのものではない。地獄から脱出した人が、なぜ再びその地獄へ戻らざるを得なかったのかを描いている点に深い余韻がある。自分の幸せと同じくらい愛する人の幸せを願う心は、自由以上に尊い価値なのかもしれない。「人を人らしく生かすのは愛だ」という著者の言葉が、長く胸に残る。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com