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巨額報酬は生むが、大きな動機は生まない成果給の逆説

巨額報酬は生むが、大きな動機は生まない成果給の逆説

Posted May. 28, 2026 08:22,   

Updated May. 28, 2026 08:22


実際、金と仕事の意味を巡る精神的危機は、すでにかなり以前から韓国社会で予告されていた。ただ、私たち全員がそれを直接確認するまでに長い時間がかかっただけだ。2009年、ある長寿調査報道番組は放送700回を迎え、韓国人700人に「いくらなら家族や友人との関係を断てると思うか」と質問した結果を紹介した。驚くべきことに、回答者の約51%が「10億ウォン以上なら」と答えた。最近、成果給問題を巡って激しく対立した三星(サムスン)電子の労使交渉結果は、こうした回答内容が単なるアンケート上の話ではなく、すでに韓国社会全体に広がっていることを示した。

表面的には、今回の三星電子労使合意は問題をひとまず取り繕ったようにもみえる。しかし、本当の危機はこれからだ。まず企業内部では、報酬格差によって半導体(DS)部門とモバイル・家電(DX)部門の間で深刻な内紛が生じている。DX部門が早い段階から反対意見を示したにもかかわらず、半導体部門主導で暫定合意が成立し、結局、組合員投票でも可決された。その結果、2年間で10億ウォン超と推定される巨額報酬案が、象徴的な意味での「一つの家族」を真っ二つに裂いた格好となった。さらに社会的にも、その合意内容に満足する人より、不満を抱く人の方がはるかに多く見える。

営業利益配分を巡る最初の危機は、25年8月、SKハイニックスで成果給問題を巡り労使が鋭く対立した時だった。第2の危機が、ゼネスト寸前まで進んだ今回の三星電子事態だ。そして今、第3の危機が到来した。今後、韓国社会では成果給を巡る社会的論争が本格的に燃え広がるだろう。すでに複数の大企業労組が、営業利益の30%水準まで成果給を支給するよう要求しており、業種を問わず「営業利益N%成果給」構造を求める事例が相次いでいる。さらに協力会社や下請け労働者までも、公然と成果給配分を要求している。

心理学者で行動経済学者のダン・アリエリーは、「大きな報酬、大きなミス」と題する実験論文で、非常に高額な金銭報酬が、実際には動機を最適水準以上に過度に引き上げ、かえってパフォーマンスに逆効果をもたらし得ることを示した。この結果を基に、彼は企業が一定水準以上に成果連動型インセンティブを高めることは、むしろ害になり得ると指摘した。心理学的観点から見ると、過剰報酬は公正性を崩壊させ、相対的剥奪感を引き起こし、外的動機の過剰によって内的価値を弱める。また、組織内の過熱競争によって協力を減少させ、報酬への執着から、さらに大きな報酬を要求し続ける危険性も持つ。

未来学者のダニエル・ピンクによると、人間を動かす3つのドライブ(動機)がある。第1のドライブは生物学的動機、第2のドライブは報酬と処罰による動機だ。そして第3のドライブは、学び、創造し、世界をより良い場所にしたいという欲求だ。米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はあるインタビューで、電気料金が高すぎて、電気がぜいたく品のように扱われる地域があるという話を聞き、胸を詰まらせてこう語った。「もっと頑張らなければならない!」。これこそが第3のドライブだ。韓国社会が直面する第3の危機を解く糸口は、まさにこの第3のドライブにある。