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フェルプスの真価はメダル数にあらず

Posted April. 21, 2026 09:36,   

Updated April. 21, 2026 09:36


五輪史上最も偉大な選手は誰か――。この問いに「競泳の皇帝」マイケル・フェルプス(41、引退)を挙げる人は多い。2000年シドニーから2016年リオデジャネイロまで5大会に出場し、金メダル23個を含む計28個のメダルを獲得した。これは個人として五輪最多記録だ。2008年北京大会では金メダル8個を獲得し、単一大会最多金メダル記録も更新した。当時、韓国は金13個で総合7位、日本(9個)、イタリア(8個)、フランス(7個)と続いたが、個人で8個という数字の重みは際立っている。

フェルプスは危機管理の成功例としても語られる。北京五輪の翌年2月、英週刊誌にマリフアナ用パイプを吸う写真が掲載された。批判が高まりかけた中で、「後悔している。誤った行動だった。人々が私に期待しない愚かで不適切な行為だった。謝罪する。同じことは二度と繰り返さない」と表明した。過ちを認め再発防止を誓う、模範的な謝罪と評価された。

さらに、五輪金メダリストという実績を改めて想起させることで、世間の関心をマリフアナ問題から次の成果へと移すことにも成功した。メディアも競技力向上のためのドーピングではない点や、当時23歳という年齢を考慮し、批判を抑えた。オメガ、ビザ、スピードといったスポンサーも支持し、国際オリンピック委員会や国際水泳連盟も、英雄でありロールモデルとしての役割継続に期待を寄せた。結果として3カ月の出場停止処分を受けながらも、信頼を大きく損なうことはなかった。

しかし、フェルプスの真価はメダル数や危機管理能力だけにあるわけではない。彼は注意欠陥多動性障害(ADHD)を抱えながら成長し、競技生活の中ではうつとも向き合ってきた。教師から「一生どのようなことにも集中できないだろう」と言われるほどだったが、母親はそれを「治すべき病」ではなく「管理すべき特性」と捉えた。水泳で驚異的な集中力を発揮する息子のために、食事や登校、練習、宿題まで綿密な日課を組み、敗北や感情の爆発の際には時間を与えて立て直しを促した。コーチもまた特性を踏まえ、視覚化トレーニングで極度の集中状態を維持させるなど戦略を組み立て、ゴーグルをわざと踏むなど突発事態にも動じない訓練を施した。

フェルプスのケースは、障害や精神的困難という制約を乗り越える手段としてスポーツが機能し得ることを示している。もちろんスポーツは万能ではないが、「欠乏」を矯正するのではなく、「違い」をエネルギーに変え、強みを伸ばすことは可能だ。4月20日は障害者の日だった。そして年齢を重ねる私たちも、ある意味で「未来の障害者」なのである。