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文化・観光を安売りすれば、未来の成長産業も台無しだ

文化・観光を安売りすれば、未来の成長産業も台無しだ

Posted March. 05, 2026 10:13,   

Updated March. 05, 2026 10:13


ポップスターのテイラー・スウィフトが2024年12月、「エラス・ツアー」最後の公演を始めた日、米経済テレビCNBCが出演者として招いたのは世界的ホテルグループの最高経営責任者(CEO)だった。彼はスウィフトのツアーが経済全体にどれほど大きな効果をもたらすかを熱弁した。スウェーデン・ストックホルムでは客室稼働率が24%上昇し、1室あたりの宿泊料は平均2.5倍になったという。地元の店も同様の利益を得ただろう。スウィフトの公演が開かれる都市の経済が活性化する現象は「スウィフトノミクス(Swiftnomics)」と呼ばれている。

同じことが韓国では少し異なる形で展開される。6月、釜山(プサン)でBTS(防弾少年団)のワールドツアー公演が予定されると、周辺ホテルなどの宿泊料金が大幅に上昇した。世界が注目する公演が開かれるのに、価格が一時的に上がらない方がむしろ不自然だ。

ところが政府は強い対策を打ち出した。先月25日の国家観光戦略会議では、宿泊業者に時期ごとの最高料金の事前公開を義務づけ、それを上回る料金を取れば一度の摘発でも営業停止とする「ワンストライク・アウト」制度を導入すると発表した。対策の実効性はともかく、宿泊料金が政府の介入すべき事案なのか疑問だ。

公正取引委員会まで実態調査に乗り出したが、結論は「監視を続ける」というものだった。談合のような不正は見つからなかったという意味だろう。官僚とて市場を知らないわけではない。財政経済部関係者は最近の懇談会で「ごく少数の事例が強調されている面がある」「結局は供給不足の問題かもしれない」と述べた。

業者が継続的に利益を上げれば投資余力が生まれ、供給が増え、サービスの高度化も進む。それによって産業が発展する。むしろ問題なのは「安すぎる料金」が続くことだ。「韓国は宿泊費が安い」という言葉は、観光客が高い金を払ってでも訪れたいと思う魅力やコンテンツがなく、業者が料金を上げられないという意味でもある。大局を考える当局者なら、取り締まりで成果を誇るのではなく、この機会を活かして地域の観光産業をどう育てるかを考えるべきだ。安価な宿泊施設は市場が拡大すればいくらでも生まれる。

文化・観光商品に関する政府の他の政策でも、「費用を下げて消費を促す」という発想が目につく。文化体育観光部は最近、農漁村の人口減少地域を訪れた場合に旅行費用の半額を還元する「半額旅行」モデル事業を始めた。ある旅行業界関係者は「観光地はお金を払ってでも行きたいと思わせるべきであり、『お金が戻るから行く』程度では長期的に地域の助けにはならない」と指摘する。

映画産業の活性化も同様だ。昨年の政府による映画観覧割引券の配布は果たして効果があったのか。映画「犯罪都市4」(2024年)以来2年ぶりの観客動員数1千万人超えの映画は、そうしたばらまき策がなくても近く誕生する見込みだ。文化体育観光部が推進する「映画サブスクリプション・パス」にも期待はあるが、「映画鑑賞はクールだ」という認識を作れなければ、「映画=安物」という印象を広めてしまうのではないかという懸念もある。

Kカルチャーと関連産業を成長の柱にするには、旧来の発想から脱却する必要がある。脆弱層の消費を支援する政策は必要だが、政策の重心は競争を促し産業成長の基盤を整えることに置くべきだ。通貨量の増加などで昼食代をはじめあらゆる物価が上昇する中、文化・観光商品だけ価格を抑え続けることはできない。安さばかり追えば、結局は粗末なものしか生まれない。