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「定年と年金の一致」は議論すらされない国

「定年と年金の一致」は議論すらされない国

Posted January. 31, 2026 10:16,   

Updated January. 31, 2026 10:16


会社の監査室に呼び出された日、キム・ジュンビさん(仮名)の手は震えていた。定年後も現金収入を得られる仕事を別に続けていたことが問題となった。2024年末に監査を始めた会社は、25年初めに彼を解雇した。51歳、定年まで9年を残した時点だった。会社は在職中の副業まで問題視して訴訟を起こし、25年末、彼は罰金まで科された。電話口の彼は、「会社の同僚とはすべて連絡が途絶えた。今も静かに息を潜めて暮らしている」と語った。それでも、言っておきたいことがあるという。「定年後、5年間は無収入になることが確定した未来だ。子どもたちはまだ幼い。どうして何もしないでいられるのか。その備えとして、賃貸業や宿泊業を少しずつやってきた。所得の空白は国家がつくったものではないのか。その負担を国民個人に押し付け、各自生存へ追い込むのは正しいのか」

「停年」とは、止まる年という意味で、「職場から退くよう定められている年齢」を指す。韓国社会はいま、定年延長をめぐり再び苦闘している。13年に「最低60歳以上」に法改正され、それまで慣行的に55歳や58歳だった定年は60歳に引き上げられた。13年が経った今、65歳への引き上げが取り沙汰されている。

しかし、立法論議は遅々として進まない。与党「共に民主党」は当初、昨年末までに立法を終えるとしていたが、23日に6・3地方選挙後に先送りすると表明した。利害が鋭く対立するため、幅広い意見を聞くというのが理由だ。選挙前の世論の反発を懸念した政治的判断とみられるが、立場による温度差は大きい。

若年層は雇用が減るとして反対する。段階的引き上げ案については、恩恵を受けられない可能性のある1960年代中後半生まれの年齢層は、速やかに一律に定年を引き上げるべきだとの立場だ。企業は賃金負担を理由に反対する。非正規労働者は、正規職のための制度だとして疎外感を抱く。

定年を延ばせば年金受給開始を遅らせるのではないかとの懸念も出る。国際通貨基金(IMF)は年金開始年齢を68歳にするよう勧告したが、政府と与党はひとまず線を引いている。国会年金改革特別委員会の公論化委員会も、年金開始年齢を68歳に引き上げる案を検討したが、年初に撤回した。副作用が大きく、現実性に欠けるとの考えからだ。しかし、火種は消えていない。国民年金公団の金成柱(キム・ソンジュ)理事長は29日、定年とあわせて年金受給年齢を引き上げる必要性に言及した。年金が遅れれば、非正規労働者の苦境は深まる。

多くの経済協力開発機構(OECD)加盟国には、年金を受け取る年齢まで働ける制度がある。定年が存在しない国もあり、あっても年金受給まで就労が可能だ。所得の空白を制度的に放置しているのは、韓国だけだ。

韓国では、23年のフランス年金改革をめぐる激しい抗議に驚き、受給開始が2年遅れる代わりに就労可能期間も2年延び、給付額も増えるのに、なぜそこまで反対するのかに再び驚いた。フランスでは「健康でいられる老年期が短くなる」として反対する。議論の次元が異なる。

所得空白の放置は、1998年の金大中(キム・デジュン)政権で、年金改革の名の下、受給開始年齢を2033年に65歳とする仕組みへ改めた時から始まった。定年延長の立法が議論されるたび、13年に経験した若者雇用の減少や企業負担の議論を、今後も繰り返すだろう。

政府は今からでも、定年と年金開始の一致を原則として明確にすべきだ。すぐに実現できなくとも、この自明の原則を掲げ、いつまでに実現するのかという青写真を示す必要がある。国民の老後の安定は、体制や理念、年金財政を理由に損なってよい価値ではない。この原則があってこそ、所得空白を埋めるための副業禁止規定の緩和など、移行期の補完策も多様に設計することができる。