
20日、釜山市海雲台区(プサンシ・ウンデグ)にある映画館「CGVセンタムシティ」。エンディングクレジットが流れ始めると、客席からすすり泣きが聞こえた。続いて大きな拍手が沸き起こる。在日韓国人の李相日(イ・サンイル)監督(51)の映画『国宝』の上映が終わった瞬間だった。
その2日前、18日には上映中に終始笑いが絶えない作品もあった。ピョン・ソンヒョン監督(45)の『グッドニュース』だ。ともに第30回釜山国際映画祭(BIFF)の「ガラ・プレゼンテーション」部門に招待された2作品は、これまでで最も観客の反応が熱い作品に数えられる。
『国宝』は、日本のヤクザ一家に生まれた少年キクオ(黒川想矢)が歌舞伎役者として成長し、人間国宝になるまでの道程を描いた。境地に達した日本の伝統演劇・歌舞伎をそのままスクリーンに映し出したという評価だ。歌舞伎に関する予備知識がなくても、登場人物それぞれの苦悩を描いた物語性の強さが光る。
李氏の演出は無謀とも言えるほど大胆だ。スクリーンいっぱいに歌舞伎舞台をそのまま映し出す。21日に取材に応じた李氏は、「高度に芸術を追求する者だけが見せられる世界があると思う」と語り、「芸術家として生きる中で失うものと得るもの、それぞれの運命を背負った人々の苦悩を描きたかった」と話した。日本では「芸術映画の真髄」と絶賛され、観客動員数1000万人を突破している。
一方、『グッドニュース』はピョン監督独自のスタイリッシュな映像が際立つ。『不汗党(ブランダン):悪い奴らの世界』(2017年)、『キングメーカー』(2022年)、『キルボクスン』(2023年)で見せたユニークなミザンセーヌとリズム感あふれる演出が今回も健在だ。今作は1970年代、平壌(ピョンヤン)行きの日本の旅客機をハイジャックしようと奮闘する人々をブラックコメディとして描いた。
軽快な編集がこの映画最大の魅力だ。緊張が最高潮に達した瞬間に力を抜く一方、俳優がカメラを見つめながらナレーションをするなど、多彩な映像表現を織り込む。ピョン氏は「俳優がレンズを見るというのは観客に距離感を与えること」と説明し、「観客にもこの騒動を一緒に見守ってほしいという気持ちで作った」と話した。また「自分が(ガラ・プレゼンテーション部門に)入っていいのか、恐縮しつつも誇らしかった」とも語った。
ガラ・プレゼンテーション部門は、BIFFが世界的に注目される話題作4本を厳選して紹介するセクション。残りの2作品は、今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジャファル・パナヒ監督の『ただの事故にすぎなかった』と、メキシコ出身の巨匠ギレルモ・デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』だ。
釜山=キム・テオン記者 beborn@donga.com






