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「安い時代」は来ない

Posted August. 26, 2025 08:45,   

Updated August. 26, 2025 08:45


海外特派員の任期を終えて、最近3年ぶりに帰国すると、急に貧しくなってしまった気がする。物価が上がり過ぎてしまった。会社周辺で昼食をすますためには、大体1人当たり1万ウォン以上かかる。3年前は6000~7000ウォンで一食を解決することは難しくなかった。好んで食べていた卵15個の価格は、7500ウォンから9500ウォンに跳ね上がった。牛乳2本セットの値段も6300ウォンから7100ウォンに、やはり前の桁が変わった。「物価が上がりすぎて驚いた」という筆者の話に、周辺の人々はむしろさらに驚いた。物価上昇の勢いを筆者ほど体感していなかった。

実際の統計を確認してみると、それもそのはず。先月の消費者物価指数は、3年前に比べて7.2%上昇した。しかし、年間上昇率は、時間が経つにつれて鈍化した。消費者物価の年間上昇率は、3年前は実は6.3%だった。今年に入ってからは月別に2%前後にとどまっている。筆者も、韓国に居続けたら、このような変化にあまり気づかなかっただろう。

物価の上昇は必ずしも悪いことではない。物価が上がれば、返済する人は実質的負担が減り、企業が金を借りて実物に投資しやすくなり、成長に前向きになりかねない。これを「マンデル=トービン効果」と呼ぶ。

しかし、今のような「ゼロ成長」時代に、物価高は命取りになりかねない。政府が22日、今年の経済成長率の予測値を0.9%と提示し、低成長が固着化しかねないという懸念が出ている。賃金はあまり上がらないのに、物価までも高騰すれば、我々は貧しくならざるを得ない。低所得層であるほど、インフレにさらに脆弱だという研究結果が多い。所得は不安定なのに、食費や暖房費など生計に直結した費用が上がれば、生存することさえ難しい。

問題は、物価高がニューノーマルになる雰囲気だということだ。主要国が成長を誘導しようと低金利政策を予告しているうえ、高くなった関税は輸入物価を引き上げるだろう。猛暑と豪雨で作柄が悪化し、農水産物の供給まで減り、物価がとりわけ高騰している。このような現象は、気候変動が深刻化しており、日常化しそうだ。もう安く消費していた時代は、二度と来ないだろう。

政府は、物価で批判を受ける度に、「物価高は世界的な現象だ」、「原因が複合的で解決しにくい」と主張している。その通りだ。物価はこれといった対策を見出し難い。それなら、少なくとも物価高を刺激する対策は自粛しなければならない。金融緩和政策がとりわけ懸念される理由がここにある。

政府は内需拡大のため、「民生回復消費クーポン」の発行に12兆2000億ウォンの国費を投入する。来年度予算案は、史上初めて700兆ウォンを超え、730兆ウォンに迫る見通しだ。財政を種のようにまいて経済を育てるという趣旨だ。

財政を、エネルギー施設や住宅建設など供給能力を拡充することに集中的に配分すれば良い。しかし、一回限りの現金支援に多く使えば、物価上昇を促進する。資金繰りが一時的には私たちの財布を厚くすることはできるが、長期的には物価を上げて財布を薄くする。その上、政府負債まで増えており、物価がさらに心配だ。韓国財政学会は今年6月「政府負債が1%増えれば、消費者物価は最大0.15%上昇する」という研究結果を出した。

政府は、収穫まで長くかかっても成長の基盤になる新事業などに、「財政の種」をまくことに集中しなければならない。そうでなければ、物価上昇で庶民はさらに貧しくなり、消費萎縮で成長はさらに遅くなりかねない。財政の種は成長の呼び水ではなく、さらに大きな危機を招く火種になりかねない。